拝啓、あの日の君へ

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 松岡くんと知り合ったのは高校一年生。  窓際で肩肘ついて外を眺める光を浴びた茶色の柔らかそうな癖毛がふと目に入って、キレイだなって。  目が離せなくなってた。  私の視線に気づいたかのようにこちらを振り返って。  自然とお互いを確認して。  交わる視線は10秒ほどだったろうか。  その10秒間で。  あの時既に私はあなたに恋をしたの。 「知ってるよ、夏帆がオレのこと好きだったの」  なんて笑ってたけど。  私だって知ってるもん。  あれから何度も目があって、松岡くんが赤くなってたの。  松岡くんだってすぐに私のこと好きになった、でしょ、きっと。  5月になって皆が仲良くなった頃。  数人のグループで遊ぶようになった。  私の隣にいたのはいつも松岡くんだったね。  連れだって歩くメンバーの一番後ろで。  触れた手をギュッと握られた時は心臓パンクしそうだった。  誰にも気づかれませんように、と隠れるようにして。 「ヤベ、手汗かきそ」  小さな照れたような声に。  気付かぬようにあなたが手を離してしまわないように、と握ってくれた手を少し強めに握り返すと。  今度は指を絡められて。  きっと私、耳まで真っ赤だったよね。
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