正しいことの既に約束された恋

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 次の日も、学校はなく、バスもなく、母親は昼飯を作らず、俺はファストフード店に行った。昨日とその前の日と全く同じ席に、秋房穂乃香は座っていた。いつもと違ったことは、俺がカウンターで何か注文してから彼女の隣の席に座ろうと列に並んでいる内に秋房が立ち上がってつかつかと俺に近づいてきて、唐突に俺に言ったことだ。 「草壁、ホテル行かない?」 「は?」  草壁というのは俺の名前だった。  俺はホテルというものに行ったことがなかった。修学旅行で誰かと同じ部屋に泊まったことはある。だけど、あんなのは勘定に入らないだろう。子供の頃、家族旅行に出かけたことはあるけれど、父親の趣味でキャンプだった。両親が離婚してからはそれもない。  俺は秋房に手を引かれて導かれるままにラブホテルに行った。セックスを目的として作られたホテルというのはちょっとシュールだ。 「先にお風呂入るね」と部屋に入るなり、秋房は言った。 「あ、はい、どうぞ」と、俺。  シャワーの音を薄い壁越しに聞きながら、この後に起こることを俺は考えた。いや、この後に俺が起こすべき行動だ。結論は出なかった。俺は瞼を閉じた。隣に秋房が横になったことがベッドの軋みでわかる。しばらくすると寝息が聞こえてくる。俺は一睡もできなかった。  会計は二人で並んで立った。秋房はすっきりとした顔で「ごめん」と俺に謝った。 「財布忘れちゃった」 「いいよ」と俺。 「世界が終わる前には返すね」と冗談なのか本気なのかわからない顔で秋房が言う。  秋房が学校中の男とホテルを泊まり歩いてるという噂が流れた。中には秋房と寝たと豪語している連中もいたが、それは嘘だと俺にはわかっていた。秋房は依然として俺たちの誰にも興味はない。完璧な美少女のままだ。  秋房はハンバーガーセットのポテトが揚がるのを机に座って待っていた。俺はその横にぬっと立ち、「今日俺の家蟹なんだけど」と言った。 秋房が美しい顔を上げる。 「食べに来ない?」と眩しそうに目を細めながら俺は尋ねる。
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