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序章 1話・天命全うせり
ワシの名は、桐生洞児(きりゅうどうじ)。
齢60になるまで「世の為人の為に生きなさい」と過去に先立った母親からの遺言を守ろうと、自分の関わる者達の為ひたすらに尽力した結果心臓ガンを発症し、床に伏せってしまった。
あれだけ誰かの為にと考え、仕事でも私生活でも生涯独身で暮らすまで生きてきたに関わらず、誰からも見舞いに来てはもらえなかった。
そのため結局誰にも看取ってもらうことができず、半年前にこの家に来てくれたお医者様から余命判決6ヶ月を言い渡されて半年後…つまり今日に至る。
「はぁ…何を望みたくてワシは生きてきたんだろうか?何事において、[誰かの為に生きる]を信条に今日まで生きて来たのは間違いだったというのか?」
申し分のない生き方をしてきたはずだった。
一人だけでも頑張って他人に尽くしていくうちに、気付いたら一人ぼっちになっていた。
「もし生まれ変われるのならせめて一度だけ、無限に続く体力を以ってどこまでも長く多くの人と親しく付き合ってみたかった
そうすりゃ誰か一人は、そばに付き添ってくれる、筈……」
目がこれ以上開けていられなくなり、ゆっくり…ゆっくりとワシの目は閉じていく。
最後には、何も見えない闇の世界だけが目の前に広がっていた。
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