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2話・異世界とな?
「……じさん」「洞児さん、起きてくださいな」
「……む?ここは、天国か?」
わしは寝ぼけた頭で周りを見渡すが、目の前に体のラインがはっきりと分かる程に、白い布だけで体を覆っている若い女性がたっているだけで、あとは何もなかった。
「ようやく起きて下さいましたね…良かったですわ!」
「お、おたくは一体どこの誰だ?」
「ああ、申し遅れましたわ
わたくしの名はシーラ、このレーグ世界の神です」
「はて?そんな名前の世界などわしは知らんぞ……ここは日本ではないのか?」
「はい、おっしゃる通りです
ここレーグ世界はあなたの過ごしていた日本がある地球とは、別の次元に存在している世界です……
あなたは病により天寿を全うされ、魂だけとなりあの世とこの世の狭間を彷徨い続けておられました
ですが、あなたの魂からは死者とはとても思えないほどのとてつもないまでの生命力を私は感じ、こちらの世界に導いたのです」
「ほ、ほう?」
「よって、あなたがいた世界の神にお願いして、特別にこの世界での第二の人生を送らせる機会を頂きました」
にわかには信じがたい。だが、今こうして自宅の床で眠りについていたわしはしっかりと二本の足でまっすぐ立ち、目の前にいる女神と言えば良いのか……彼女と対話できている。
自分の身に起きている現状を理解しながらもわしが戸惑っていると、女神シーラはおもむろに細長く小さい杖を服の内…胸元から取り出した。
……ムムム、なんとも善き眺め、いやはや!けしからん格好だ。
「もう、洞児さんたら……恥ずかしいのでそんなまじまじと見ないでくださいまし!」
「おおっとと、すまんすまん!なんせこの年になるまで働きっぱなしで、女の体をまじまじと見れてこなかったから思わず……」
「まあ!本当に働き者だったのですね?」
「そう、だな……これまではずっと誰かの為にと精一杯尽くす生き方をして来たんだが、結局最後は誰にも見られることなくひっそりと世を去ってしまった
どうすれば、人に見てもらえたのだろうか?」
「そうですね……私もゆとりがある日は天寿を全うする前までの洞児さん、あなたの日常を見させてもらってました
……が、いささかお節介が過ぎてましたよ?」
「な、なぬぅ⁉︎」
わしの行動が、ただのお節介だと‼︎
「あなたは、人が手伝って欲しくもない事にもたくさん手を出していた為、相手側がかえって気を遣ってしまい距離をとっていたのです
その……言い方は良くないかも知れませんが、貴方は他人の気持ちに無頓着過ぎました」
他人の気持ちに無頓着過ぎた……そうか、そうだったか。ならば周りの者達が時々、腫れ物を見るような目でこちらを見ていたのも頷ける。
「なるほど、ではどんな時に助ければ皆は喜んでくれたんだろうか……」
わしは、来世となる異世界とやらではどんな生き方をすれば良いのだ。
「そうですね…貴方は寿命が尽きる前に、[無限に続く体力をもってどこまでも長く、多くの人と付き合ってみたい]とおっしゃられてましたから、せっかくなのでその望みが叶うように私の祝福(ギフト)[無限体力]を与えましょう!
それとこれから向かう場所へ行く際に、これから予備知識と現地ではどんな生き方が良いか…
それをここでしばらく学んでいただきますので、しっかり聞いててくださいね?洞児さん!」
「む……分かった!流石にここに居続けたとしても、何もしなければ事は動かんしな?」
彼は自身の無頓着さ故に、いきすぎた親切心が原因で煙たがられていた事を知り、女神に新たな生き方を教えてもらう。
今後新たな人生の為に必要な話をまずは聞いてから、ゆっくりと彼は考えて生きようと努める事にした。
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