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「で、それからどうなったんですか?」
「何、嬉しそうな顔してんのよ!」
バーのカウンターに肘をつきながら、國山泉の話に聞き入る後輩スタイリストの千佳。泉から叱られても、ニヤニヤと薄ら笑いを浮かべている。
「それからも何も、石原雫が急に現れて、私は番組を降板。収録の前日に急に告げられたんだよ。ありえないでしょ?」
「ザ・芸能界って感じですね」
「だから、なんでアンタ、そんなに嬉しそうなの? 殴ってやろうか?」
軽く悲鳴をあげながら、千佳はウエイターに追加のカクテルを注文した。
「ああいう成り上がりタレントって、気に食わないのよねぇ」
「裏で何かやってたりして。プロダクションの社長とデキちゃってる──とか、週刊誌でよく目にしますもんね」
千佳がカメラを向けるフリをすると、泉は焦ったようにそれを制した。
「私がどれだけ努力して、あの番組のアシスタントを勝ち取ったか。プロデューサーやディレクターにもバカにされながら、耐えに耐えてようやく掴んだポジションだからね。それを一瞬で横取りした石原雫は許せない!」
「殺したい?」
「殺したいっ!」
泉の隣でひとり静かに飲んでいた男が、急に声をかけてきた。
「協力、しようか?」
薄暗い照明が、男の額に刻まれた傷跡を照らし出す。どう見ても一般人とは思えない男の怪しい雰囲気に戸惑ったが、カクテルの酔いも手伝って、泉は男に寄り添った。
「殺して欲しい女がいるの」
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