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「!!」
がばり、と少女はベッドの上で目を覚ました。全身にはぐっしょりと汗を掻いている。息が荒い。視線が定まらない。現実と夢の境界線を――しばし、彷徨う。
「あ……」
時間をかけて、少女はやっと――自分が置かれた状況を理解するに至っていた。此処はそう、学園に併設された学生寮。自分はここで、毎日一人寝起きして――就職のための勉強をしている。
さっきの夢は――現実ではない。
そう、今の。少女の現実では――ないのだ。
「……また、同じ夢…」
わかっていても、失望せざるをえない。ここ連日で同じ夢を見る理由を、少女――カサンドラはわかっていた。自分はどこまで後悔し続けるつもりなのだろう。いつものことだと、どうして割り切ることができないのか。こうして新しく“移って”しまった以上、前の世界のことを自分がどうこうすることなどできないのである。歴史は変わらない。時間は戻らない。そんなの、この魔法が当然のごとく存在する国であっても当たり前のことだというのに。
――情けない。……よっぽど私は…前の世界に未練があったと見える。
ベッドから抜け出し、カサンドラは鏡の前に向かった。金髪碧眼の、十五歳の少女がそこには映っている。美人か美人でないか、は自分ではよくわからない。ただ実年齢よりも幼く見えるらしいというのは周囲の評価から認識していることだった。こうも寝不足のせいでしっかりクマができていると、さすがに老けて見られそうなものではあるが。
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