時を逃す少女

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「いいのいいの!」 悠美は彼に千円を押し付けると車を降りて家に帰って行ったのだった。 ◇◇◇ こんな悠美は後日、高校時代の同窓会に参加した。 「悠美。今まで豊君がいたのよ」 「そうなんだ……」 あの時振られた初恋の彼は、たった今仕事が入り帰ったと友人は嬉しそうに話した。 こうしてまたもや機を逸した悠美は酒を飲んで終電で帰ってきた。 タクシーを待っていたが彼女の後ろにいた男性は品の良い紳士だった。 ……この人は人生うまく行ってるみたいだな…… そう思った悠美は彼を誘わず一人で帰って行ったのだった。 ◇◇◇ そんな悠美は会社帰りにタクシーに相乗りした彼に偶然会った。彼はお礼をしたいと言うので、悠美は駅前にあった前から入ってみたかった焼き鳥店に付き合って欲しいと頼んだ。 「この店。前から入りたかったんですけど。男の人ばっかりだし」 「確かに女性一人ではハードルがありますよ」 彼も入った事がないと言った。結構ぽっちゃりの彼は店員に注文してくれた。 「僕達初めて入るんですけどお勧めはなんですか?それと、あの人達が食べてるのが気になるんですけど」 全然気取らない彼はこうして悠美に注文してくれた。 「ええと山口さんですよね。その、ずいぶんはっきりしているんですね」 「そうですか?あなたもそうじゃないですか」 彼は一緒にタクシーを乗った話を始めた。 「こんな僕を誘ってくれて嬉しかったです。あの日は仕事が大変で疲れていたので」 「寒かったですもんね、あ、来た。例の焼き鳥!」 悠美も彼にどう思われようと気にせず好きなものをたくさん食べた。
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