時を逃す少女

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時を逃す少女

「好きです!付き合ってください」 「え?困ったな……」 思い切って告白した相手は困ったように頭をかいていた。 「実はさ。さっき隣のクラスの女子に告白されて。付き合うって返事したんだ」 「さっき?……」 結構気持ちが通じていた気がした悠美は、こうして初恋を逃してしまった。 ◇◇◇ 「あ、乗ります、って」 プシューとドアが閉まり電車は行ってしまった。 ……また逃しちゃったか。 いつもギリギリでチャンスを逃す事に慣れていた会社員の悠美は、この夜残業をしてラストチャンスの終電の地下鉄で帰ってきた。 ……間に合うか?それ! 彼女は駆け足で最終バスをあきらめ、第二希望のタクシー乗り場に走って行った。 「はあ、はあ、はあ」 やはり間に合わず、彼女の前の人が乗り込んでスタートして行った。 外は雪が深々と降り、寂しい夜の景色であった。 ここで次に来るタクシーを待っていた彼女の後続に息を切らして走ってきた男性がいた。 ……この人はバスに乗れずにここにきたんだ…… そう思った悠美はちょっと気分が良かったが、だんだん寒くなってきた。 それは多分、隣に立つ男性もそうだろうなと思っていた。 やがて遠くからタクシーの灯りが見えてきた。 彼女は気の毒な彼に思わず声をかけた。 「あの。どこまで乗りますか?」 「……僕の事ですか?」 男性は驚き顔で悠美の知っているコンビニの名をあげた。こうして二人は一緒にタクシーに乗りこんだ。 「……お仕事ですか」 「はい」 眼鏡が曇る彼とはこれで会話は終わった。そして悠美は彼よりも先にタクシーを降りた。 「これ。ここまでの料金」 「いえ?自分がここは」
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