第1話 薔薇の番人 ~sideカイル~

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第1話 薔薇の番人 ~sideカイル~

 辺境伯の館は、門から屋敷まで、馬車で2分くらい。  辺境伯にしては、そんなに大きな屋敷じゃない。  代々、ロッテリッツの当主は堅実だった。  つまりは、資産を貯め込んでいる可能性が高いということ。  門には門番がいなかった。  田舎で治安がいいからな。  オレは開けっ放しの門を通り、真っ直ぐ伸びた館への道をゆったり歩いた。  道の両脇には薔薇が並んで咲いている。  ここに名前を付けるなら「薔薇の道」で決まりだな。  門の近くは黄色や白。  館に近づくにつれてピンクから赤色と濃くなってくる。  白い館とのコントラストが美しい。  館はそこそこ大きい。  部屋数は正確には分からないが、30以上はあるだろう。  白くて山の上に建つこの館は、かつては白鳥館とか白鳥城と呼ばれていたけど、今の当主になってからは「薔薇の白鳥館」と呼ばれているらしい。  この入り口の薔薇もだが。  辺境伯も、薔薇のような美男子と噂だ。  領民に「麗しの薔薇の君」なんて呼ばれている。  さて、どのくらい美しいのか。見てのお楽しみだな。  
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