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息を一吸いして、顎を引く。
マイクに向かい、なるべく感情がこもらないように押し殺した声で囁いた。
「それでは、これで最後の通信を終えます。
ヨーソロー。良い旅を」
言いたいことは色々あった。送りたい言葉はたくさんあった。
"必ず新天地にたどり着けますように"
"みんなどうか無事でありますように"
"そして"
"そして願わくば"
――"私の事を忘れないでいて"
しかし、言ったところでどうなる。
旅立つ彼らの心に、小さな、けれど落とせない染みを残すだけだ。
自分の口が、余計なことを言い出さないうちに。
声音とは裏腹に、慌ただしく震える手で通信機の電源を落とした。
――静寂が痛いほどに耳を打つ。
しかしこれは。これから続く永劫の静寂の、はじまりでしかないのだ。
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