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繰り返される朝。
居室で目覚める。身支度をする。朝食のパックを開く。設備の点検をして、不必要なエネルギー供給箇所を見つけたので遮断した。
昼に差し掛かったので、食堂へと向かう。今日の席はフロア全体が見渡せるところにしようか。
今日のメニューは、皆を見送ったあの日と似ていた。
魚を模した加熱タンパク、オートミール風の炭水化物。栄養スープは味噌風味。機械的に口に運びながら、ふと気が付いた。そういえば、昨日見た映画に、味噌を作るシーンがあったっけ。
味噌を作るには大豆と塩? 他には何が必要なんだろう。
残った人類すべてを長期的にまかなうことは出来ないものの、実験的な農作ゾーンならあった。人工太陽はある。かつては1日の使用量が制限されていた水も、私一人の使用量では完全に循環させきることすら出来ていない。
外から採取してきた土を使ってみるのはどうだろうか。植物の育成には添加すべき必要な栄養素、というのがあったはず。今日の午後はまずそこから調べよう。
人類が持ち出せる技術をかき集めて旅立った後のコロニーには、当然、演算能力の低い雑役AIしか残されていない。しかし、人間は長い期間、対外的に話しかけないでいると、筋力、知力、諸々の能力が衰える、と少し前に読んだテキストデータにあったので、最近は残ったうちでは一番マシなAIを音声操作に切り替えて、アクセス権限をコロニー全域に拡張してみた。
話しかければすぐ反応する、というわけだ。疑似会話を目的に音声操作にしているからには、一応呼び名もつけてみた。いずれはイヌみたいな躯体を作って、ポータブルに随伴させるのも悪くないのでは、と思っている。
ええと、今日したい事は、大豆の種苗サンプルの保管位置と栽培条件を調べる事と、未探索エリアの資材探し。探索は私が目視で行うので、AIには大豆の資料を揃えさせよう。
私は食べ終えた食事パックをダストシュートに投入すると、壁内に設置されているマイクに向かって声を上げた。
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