ヒューストン、聞こえる?

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この星は駄目になってしまった。 いや、もうずっと前から、駄目になっていた。 たくさんのものが壊れ、たくさんの動植物たちが滅びて、たくさんの人が死んだ。 私たちはそれでも、とても高度に発展していたので、シェルターのコロニーを作り、どうにかこうにか生き延びていた。 それでも限界はある。 コンピューターの計算の元に、物資を、食料を、酸素を徹底的に管理して循環を繰り返してきたけれど、地球環境という大きなサイクルでの供給が受けられない環境では限界がある。 そんな環境下で地球外での未来を模索して数十年。もしかしたら、移住が可能かもしれない星が見つかった。当然、地球とまったく同じではない。酸素も気温も水質も、そのままでは人類の住めない星だったけれど、今の技術をもって時間をかければテラフォーミングは不可能ではなさそうな新天地。 瀕死の地球で少しずつ滅びていくのと、新しい星を開拓するリスク。可能性の天秤は、わずかに後者に傾いた。残っている人類は少ない。全員を乗せて船を出すのも不可能ではない。わずかな希望に向けて移民計画が始まった。 それから十年。ようやく飛び立てる手筈は整った。 ただ一つの欠陥を残して。 私は味のしない食事を終えると、パックをトレイごとダストシュートに放り込んだ。このゴミもまた循環される。10万人の生活を支えてきたシステムは、今や私一人のためだけに稼働している。私一人を維持する程度なら、私の寿命が尽きるまで、いや、尽きても稼働し続けるだろう。
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