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※
結果から述べると、私の凧は。
空に放った1.8秒後には一番弱かった結合部から破損し、あっけなく吹き飛んで散った。
あまりにも儚かった。
やはり200年前の地球の中でも、比較的穏やかだったという地域と、現代の気候では風力に差がありすぎたのだろうか。
それとも、設計図も無いまま見た目だけを似せて作った構造に不備があったのか。
最近のコロニー内ランニングの目的地は、資料室一本になりつつあった。
凧を完全に飛ばすためには…柔剛性を考慮した素材選び、全体の力学的計算、気候風向きを予測したタイミングの選定…いったいどれほどの分析が必要というのか。たかが子どもの遊びだったはずなのに、この複雑さはなんという事だろう。
コロニーに遺された演算装置には、当然ながら想定されていない内容なので、プログラムをイチから組みなおす羽目になった。ばかばかしい。
シュミレーションを繰り返す傍ら、適合する素材を探して、遂には居なくなったメンバーの居室までも開錠する始末。ばかばかしいにも程がある。
こんなものはただの現実逃避だ。
これが成功したところで、人類の行先に何か変化があるとでも?
私の努力に誰かが報いてくれるとでも?
神様が見てくれているとでも?
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