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<6>
蓮が泣きながら暗い夜道をとぼとぼ歩き、向かった先は・・・昨日藍川と話をした坂の途中の休憩所だった。
景観の良いその場所には、街灯が一つ、傾斜のきつい斜面からの墜落防止の為の柵が一つ、小さな木製のベンチが一つ置かれている。
周囲には人気も無い上、そもそも他人の声すら碌にない。
蓮はその場所が大好きで、向日葵がぐずって寝てくれない時は、よくそこで寝付いてくれるまであやしたりもした。
そして何より、其処からは星空がとてもよく見える、蓮にとっては最高のロケーションなのだ。
(・・・此処でよく星空を見上げたっけ・・・・)
今日は雲が少し出てはいるが、それでも夜空には満天の星がきらきらと瞬いていた。
蓮は涙を拭い、ベンチに腰掛けてじっと星空を見上げた。
すると・・また、涙が込み上げて来た。
俯き、声を殺して静かに泣いた。
(言っちゃった・・・パパに、僕の本当の気持ちを・・・・)
その時・・・遠くから、聞き慣れないバイクの走行音が近づいてきた。
(誰だろう、こんな夜中にこんな山道を・・・)
そのバイクは、何故か蓮の真後ろで停まった。
思わず、涙を拭いながら振り返った。
その人は、ベンチ脇にバイクを停め、おもむろにフルフェイスのヘルメットを脱いだ。
そして、こう呟いた。
「・・・蓮、こんな時間に何故ここに・・・?」
その声の主は・・・来人だった。
急に現れた、自分の想い人に・・・思い切り焦りを見せまくってしまう。
「わっ・・・わわわ!あの・・・こ、こんばんわっ」
(自分、焦りすぎ!)
余りに妙な挨拶に来人が噴き出し、ゲラゲラ笑う。
「あっはははっ!何それ・・・ウケるんだけど」
来人を見て、笑い声に安心して・・・蓮はまた大粒の涙をぼろぼろ零した。
「ひ・・・っ、ひどいっ・・・。笑う・・なんて・・・」
泣き笑いのその笑顔が歪み、蓮は思わず来人の胸に飛び込んだ。
蓮はそのまま来人の胸で、声を殺しながらじっと静かに泣いた。
「・・・・・蓮」
来人は胸に飛び込んで来た蓮を、優しく抱きしめた。
「・・・すまない、やっぱりお前が忘れられなくて・・。昨日も今日も、あんなにお前に拒否されたのに・・・ハハッ、俺も懲りないよな・・」
「違うんです!」
蓮は思い切り顔を上げ、泣き腫らした瞳で来人をじっと見つめた。
「あれは僕の本意じゃなかった。体が勝手に動いてしまったんです。・・・僕にも理由は分かりません。でも、僕は・・・貴方が・・」
肝心の言葉を言いかけた時、蓮は藍川との約束を思い出した。
「・・・どうした」
「藍川社長と約束したんです、貴方と外で二人きりにはならないって」
「・・・そうか、じゃあバイクに乗れ。話しやすい所に連れて行くから」
来人はそう言いながら、持っていたフルフェイスのヘルメットを蓮に被せた。
そしてバイクに跨り、蓮を後ろに乗せると
「しっかり掴まってろ」
そう言い、そのままバイクを発進させた。
着いたのは、昨日来人に連れ込まれた高級旅館だった。
但し彼等の借りている離れの、そのまた更に裏口にだ。
来人はそこに慣れた様子でバイクを置き、そのまま自室へ蓮を連れ込んだ。
部屋に入り、厳重に鍵をかけ、全てのカーテンを閉めると蓮のヘルメットを外した。
「これで、誰にも見られる事は無い。此処には基本、誰も来ないから」
蓮はそれを聞いた瞬間、来人に思い切り抱きついた。
「やっと、逢えた。やっと・・来人さんに」
「蓮・・・」
来人もまた、蓮をきつく抱きしめた。
二人はどちらからともなく、唇を合わせた。
そのまま・・・・長い抱擁の後、顔を上げた蓮に、来人は尋ねた。
「向日葵・・・あの子を何故産んだんだ。・・中絶も出来ただろうに」
「貴方には、迷惑だったんですか」
「いいや、その逆だ。嬉しかった。蓮が俺を受け容れてくれた証だからな」
「嬉しい・・・。僕も、貴方との間に授かった大切な命を、どうしても産みたかったんです。・・・・貴方が、大好きだから」
「蓮、今でもずっとお前を愛してる。もうお前無しじゃ、俺は・・・・」
「僕もです・・・。僕も、貴方が居ない世界にはもう戻れない。貴方を失う位なら、死んだ方がましだ」
「俺もだ。お前が居なかったこの一年半・・・俺には後悔と絶望しかなかった。もうお前を二度と離さない、絶対に」
「嬉しい・・・来人さんにそう言って貰えて・・・・」
二人はベッドサイドに腰かけ、何度も抱き合い、何度もキスをした。
だが、来人はそれ以上をしようとは決してしない。
流石に痺れを切らせた蓮は、意を決して来人をベッドに押し倒した。
「来人さん、僕をもう一度ちゃんと貴方の物にして下さい。お願いします!」
ところが、来人はいまいち煮え切らない。
「・・駄目だ、お前は未だ未成年だ」
蓮にそう告げ、顔を背けてしまった想い人の余りに煮え切らない態度に蓮は焦り、更に精一杯のアピールをする。
「でも僕は、あの時貴方に愛して貰い、貴方の子を産みました」
それでも尚、来人は首を縦には振らない。
「それはイレギュラーな事だった。・・・俺はお前が18になるまで我慢する」
蓮は必死に来人に抱きついた。
「嫌だ、またふいに発情期が来て誰かに襲われたら、”貴方の物”では無くなってしまう」
「それは・・・・・」
来人は言葉に窮してしまった。
「僕をもう一度抱いて、来人さん。僕が貴方の物だと、ちゃんと印をつけて。・・一度の行為が許されるのならば、二度も同じです」
その一言に、来人は本気で焦る。
「馬鹿!あれは決して許された行為じゃない、あれは”事故”だ!・・・本当なら、あんな風に痛めつける様にお前を抱くんじゃ無く、もっと段階を踏んで優しく抱きたかった。あんな抱き方、決して俺の本意じゃない。大切なお前を・・・俺は、もっと優しく抱きたい」
そう告げ、蓮の頬を優しく撫で、口づけた。
口づけの際、閉じていた瞼をゆっくりと開け、蓮は来人をじっと見つめながらにじり寄り、更に食い下がって来た。
「・・・解りました。なら、今から段階を踏んでください。・・最後までしなければいいんでしょう?なら・・・」
そう言いながら蓮はネクタイを外し、シャツの襟元のボタンを幾つか外した。
その際の蓮の、欲情を誘う様な潤んだ瞳、そして・・少しだけ開いた制服のカッターシャツの胸元からちらちらと見える、少年の少しだけ華奢な肩甲骨と、少年の物とは思えないほど白く滑らかな肌と胸元。
ともすれば、屈んだ胸元からピンクの突起がちらちらと覗き、その白い肌と相まって、得も言われぬ厭らしさを感じてしまう。
重ねて、蓮は必死に「抱いて欲しい」と来人に馬乗りになり、懇願して来ていた。
愛する人が、自分を欲してくれているのだ。
しかも形振り構わず、自分に馬乗りになってまで。
来人の下半身は、必死に抑えてはいたものの、もう少しで暴走してしまいそうな位熱
を持ち、はち切れんばかりに膨張していた。
その、膨張した下半身に・・・ふいに蓮の下半身が擦り付いて来た。
(なっ・・・・)
「貴方が・・その気になる様に、僕、脱ぎますから・・・・」
蓮はそう伏し目がちに言いながら、微妙に震える手でネクタイに手を掛けた。
15の少年の頬は、羞恥に耳まで真っ赤に染まっている。
残ったシャツのボタンにに手を掛けた直後、更にがくがくと震えだし、顔は涙目、その必死さに余計にエロティシズムを感じてしまう。
(勘弁してくれ・・・!)
流石の来人も、それには参った様だ。
蓮の肩を掴み、にじり寄ってくる蓮を自分から必死に引き剥がした。
「待て待て待て! ・・・どうした、いつも沈着冷静なお前らしくない。・・何かあったのか? さっきは泣いていた様だし」
来人のその言葉に、蓮は我に返ったように顔を上げた。
その瞳に、見る間に涙が堪ってゆく。
「・・・だって」
同時に、堰を切ったように涙が溢れた。
「パパが、・・僕と・・ママを連れて・・・アメリカに帰ると言い出したんだ・・・・」
「・・・でも、仕事は? どうするつもりだ」
「すべてキャンセルして、芸能界も辞めさせるつもり」
「そんな事、幾ら何でも・・・・・」
蓮は泣きながら叫んだ。
「出来るんだ! 僕のパパはアメリカの上流階級出身で、沢山のコネクションを持っているんだ。パパに掛かれば、僕の痕跡位なら日本から簡単にきれいさっぱり消し去る事が出来る。・・・貴方との事も」
「・・どういう、事だ・・・・」
「在アメリカ領事館の友人に、僕たちの事を調べさせたって・・。だから、貴方の事も、向日葵が誰の子かもパパは全部知ってる。今度の映画は・・貴方の主演だから、「絶対許さない」・・って」
「・・・・・・」
「だから! だからもう一回僕が妊娠すれば、僕たちの仲を裂けなくなるでしょう! ・・・だから、僕を抱いて・・・お願い、来人さん・・」
来人は咄嗟に蓮の両肩を掴んで再び自分の体から引き離し、
「だったら! お前の父さんに俺が先ずは謝罪する所からだろうが。いいか、焦ってこんな事したって状況は更にこじれて悪くなるだけだ。良くなるなんて事はまずない。何時ものお前ならばこの位分かる筈だろう? いい加減目を覚ませ!」
そう強く諭した。
蓮は泣きながらその言葉をじっと聞き、話が終わるや否や来人にしがみつきわんわん泣いた。
その様子を背後でじっと聞いていた人物が、来人に
「・・・もういいかしら、私も混ぜて頂戴」
と声を掛けた。
急に聞こえた第三者の声に蓮が驚き、声のした方に顔を向けると、そこにはやはり藍川の姿があった。
「すまない。流石にお前の取り乱し様が普通じゃなかったんで、百瀬に助けを求めた。・・・また、”あんな事”はごめんだからな」
「藍川社長・・・・」
藍川はため息交じりに連達のベッドまでつかつかと歩いて行き、蓮の頭をげんこつで軽くこつんと叩いた。
「まったく・・・。まだ貴方15歳でしょう? どこであんな、男を誘うな仕草なんて覚えたのか知らないけれど・・。聡明な貴方なら解ってると思うけど、「淫行条例」ってのが有ってね、貴方達未成年に私たち大人は手を出しちゃいけないのよ。残念ながら来人はもう21だから、もう私達”大人”にカテゴリーされてしまうの」
「・・・・・すみません」
蓮は項垂れ、素直に藍川に謝罪した。
「それにしても来人、貴方よく蓮君我慢できたわね。傍で見てたけど・・・「大好きな子からの”性的な”おねだり」、貴方の年齢で”アレ”をお預けって・・。あれはかなりキツイわね」
「ああ、百瀬が居なかったらかなりの確率で喰ってたかも。超エロ可愛かったんで」
来人が溜息交じりに告げた。
「え、あ・・・そのっ・・・」
その一言に、先程まで我を忘れていた蓮が自分の痴態を思い出し、顔を真っ赤にして来人の胸に顔を埋めてしまった。
「来人、貴方はどうしたいの?」
藍川からの問いに、来人は頷き
「蓮の父親にまずは詫びを入れる。・・・それからだ」
「そうね、口封じに協力頂かなくちゃいけないし、協力するわ。ただ・・・」
藍川はちらりと窓に視線をやった。
「蓮君のお父さん、今どちらに?」
「民宿に居る筈です」
「それじゃあ、これ以上貴方のお父さんから勘繰られぬ様にさっさと戻りましょう。私が車を出すわ」
藍川が車を旅館の駐車場から動かすと、夜にもかかわらず例のしつこいゴシップ記者が素早く駆け寄って来た。
ちなみに藍川の愛車は赤のBМW X7。
しかし、運転しているのは藍川が連れて来たマネジャー。
彼等は一様に、黒系のタイトなスーツを着込んで、夜にもかかわらず目にはサングラスをかけている。
その助手席にも、同様の姿をしたマネジャーが乗車していた。
そして後部座席の藍川だが・・・どうも様子が変だ。
「おや~藍川さん、今頃お出かけで?」
「さっきは来人君も、バイクで何処かへお出かけのご様子でしたけど~?」
「「誰か」を連れ帰ったまま、まだ出て来ませんが」
「ま~さ~か~、その辺のJK、お持ち帰りしてるとかぁ~?」
その記者二人は、藍川たちが「要注意」としている例の二人だった。
しかし、藍川は彼等の質問になかなか答えようとしない。
それどころか、ずっと俯いて体を小さく震わせている。
流石にゴシップ記者二人も、彼女の異変に気が付いた様だ。
「・・どうされました?」
「何処か、お具合でも?」
二人が再度尋ねると・・・。
気怠そうに顔を上げた藍川が、口元を押さえながら
「ごめんなさい、少し具合が悪くて・・・」
そう小さく、呻く様に呟いた。
すると、無神経な二人は
「そりゃ、心配ですねぇ!」
「我々も付き添いますよ~」
そんな勝手な事を言いながら、ずかずかと車に乗り込んできた。
慌てた助手席のマネジャーが、
「ちょっと貴方達、勝手に乗り込まないで下さい!」
そう制したのだが・・・。
そんな言葉を聞き入れるような二人ではない。
「運転手さん、早く行って下さい」
「我々にはお構いなく」
「お薬買いに行くんですか?それとも病院?」
「まあ・・時間的にも距離的にも、薬ならコンビニが妥当ですかね~」
「・・・そこでまさか、誰かと待ち合わせとか?」
「まさか、ねぇ~?」
運転手に車を出す様に指示を出し、藍川を挟み込むように乗り込んだ二人は背をさする振りをしつつ執拗に藍川に質問をぶつけ続けた。
しかし車は幾らも走らぬまま、数百メートルしか離れていないコンビニの駐車場に停まった。
藍川は、マネジャーに
「・・ごめんなさい、動くのも辛いの。・・お薬、買ってきて頂戴・・・」
お腹を押さえながら、苦しそうにマネジャーにそう告げた。
助手席のマネジャーは無言で頷き、そのまま車を降りてコンビニに駆け込んでいった。
その時藍川が急に、
「あっ!お金を渡し忘れたわ。ごめんなさい、これで支払う様に言って」
そう運転手に、財布を差し出しながら必死に頼んだ。
「わかりました」
運転手が頷き、藍川から財布を受け取るとそのままコンビニの中に消えて行った。
車のキーを車内に置いたまま、エンジンもかけたままで。
その後暫く、二人に挟み込まれた状態で、尚も執拗に質問を続けられていた藍川が、
「ごめんなさい、もう限界」
そう小さく告げつつ口元を押さえながら車を降り、コンビニに駆け込んでいってしまった。
車内に取り残された二人は、これ幸いと、
「ラッキー!車内物色し放題じゃん」
「今の内になんかいいネタ、ゲットしようぜ~」
無人の車内を二人が物色しだして数分後。
先程までとは打って変わり、満面の笑顔の藍川が一人でニコニコ笑顔で戻って来た。
二人は慌てて手を止め、
「お早いお帰りで・・・」
「もう回復なさったんで~?」
薄ら笑いで車内から出迎えた。
「ええ、吐いたらすっきりしたみたい。もう帰るわ」
そう二人に告げ、車の運転席に颯爽と乗り込むとそのまま華麗なハンドルさばきで旅館に戻ってしまった。
ゴシップ記者二人は、流石にその時ばかりは文句も言わずに大人しくしていた。
その後旅館前で降ろされた二人は、藍川が旅館の奥に消えた時に漸くはたと気付いた。
「・・・おい、あのマネジャー二人は?」
「ああ!そうだよ・・・やられた!」
二人の地団太を踏む様を、藍川はレコーダー片手にじっと見つめ、ほくそ笑んだ。
「フフッ、馬鹿な人達」
翌日の早朝。
未だ時刻は5:30前。
記者二人の許へ、大手ゴシップ雑誌の編集長から電話が入った。
「お前ら、何て真似してくれたんだ!」
二人は携帯電話に出る直前まで安旅館の布団に包まって寝ていた為、編集長の怒りの原因が理解できずに、会話が全く要領を得ない。
布団の周囲には、昨夜二人が食べ散らかしたカップ麺の残骸や缶ビールの空き缶、空になった袋菓子の袋が散乱している。
彼等が布団を動かした時、布団脇に置いていた飲みかけのペットボトルがごとんと倒れた。
「・・・何が、ですか?」
小太りの男は、少し離れたテーブルに置いていた眼鏡を探している。
「俺ら昨日は、結構いい仕事してましたけど」
「馬ッ鹿野郎!!!」
その二人の眠気を吹っ飛ばすほどの怒号が飛んだ。
「お前ら、昨日はとんでもない事してくれたな! いいか、よく聞けよ? ・・今日の早朝三時に、ZEXの顧問弁護士からパソコンに恐ろしい量の訴状が届いた。いいか、お前らのだ!」
「ええっ?」
「俺ら、何にもしてませんよ!」
「馬鹿野郎! じゃあこれは何だ! この書面の内容だと、体調不良の藍川社長に付きまとい、その上勝手に藍川社長の車に許可も得ずに乗り込んで、その上、具合の悪い彼女に執拗に話しかけた上、身体を執拗に触り、挙句に車内の家探しまでしたと、そう書いてある! 執拗に付きまとったのは「ストーカー規制法違反」、身体を執拗に触ったのは「強制わいせつ罪」、勝手に車に乗り込んできたのは「住居侵入罪」に当たるそうだ。これ以上お前らが付きまといを止めないのなら、被害届を今日にでも提出すると向こうさんは言って聞かない。・・本当に、思い当たる事は無いのか」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
「・・ちなみにな、添付ファイルに証拠の音声と画像がはっきり残ってる。今、俺が上にお伺いを立ててるが・・・・。以前からお前たちの取材方法には、苦情が絶えなかったんだ。俺もこれ以上は庇い立て出来ん。まずはお前ら一旦本社に戻って来い。向こうは本気だ。いいか、あんな大きな事務所と事を構える訳に行かんのだ!」
そう二人を怒鳴りつけると、電話は一方的に切れた。
「・・・・やばいぞ」
「嘘だろ~~~~!!」
直後二人は飛び上がる様に布団から跳ね起き、すさまじい勢いで荷物を片っ端から鞄に詰め込み、タクシーに転がり込むように飛び乗って立ち去って行ってしまった。
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