エピローグ 修学旅行初日の朝

1/1
7人が本棚に入れています
本棚に追加
/57ページ

エピローグ 修学旅行初日の朝

エピローグ 修学旅行初日の朝 これ以上何を失えば 心は救われるの どれほどの痛みならば もう一度君に会える One more time 季節よ移ろわないで 携帯のアラームが山崎まさよしのOne more time one more chanceを響かせる。自分の好きな曲だ。新海誠のアニメ、秒速5センチメートルの主題歌。 今日から修学旅行。しかし、あまりテンションは上がらない。なぜなら、期末考査が10日後に控えているからだ。いくらテストの結果が内申に関わるとはいえ、気にしすぎだと思う。その内申が高校入試の結果を左右するとしても…気が小さいなと自分でも思う。もっと他の人みたいにテストを気楽に構えられたらなと思う。気が小さいせいで人生損してる。死にたいな〜と思う。そもそもこんな風に鬱状態になったのも、勉強のせいだ。高校入試に対する不安、大学の新入試に対する不安が自分を鬱にした。もともと、何事も手早く習得できない。人より努力してやっと人並みの成果が出せる程度。14歳にして人生のほどんどは苦行だなんて思ってる。社会人になったらもっと苦労があるだろうに今からこんなに病んで生きていけるのか?そんな思いがますます自分を追い込んでいく。 思えば毎日恋愛のことばかり頭に浮かぶ。毎日人間観察をし、クラスの恋愛関係をチェックし、今後の展開を予想することは生き甲斐になっている。そんなに恋愛が好きで、好きな人もいるのに全然モテない。周りの友達はまだ交際経験がない人も多いが、自分よりも基本スペックの高い人ばかりだから、付き合うのも時間の問題。自分だけがリア充の流れから取り残される光景が目に浮かぶ。あぁ、全く人生はコストパフォーマンスが悪い… こんなくだらないことを考えているうちに家を出る準備が整った。「忘れ物ない?気をつけてね」とお決まりのセリフを言うのは母。もちろん自分が鬱状態になっていることなど知らない。反抗期にはなっていないこともあり、母にこの鬱状態のことを話そうと思ったことがあった。しかし、今や中学生。親に悩みを打ち明けたところで解決する類いの問題ではないと思った。正直、彼女さえできればこの鬱状態も一瞬でぶっ飛び、楽しい人生が送れるだろう。それくらい自分にとって女子の存在は大きかった。母は軽い自殺未遂をおこしかけた息子を元気よく送り出した。
/57ページ

最初のコメントを投稿しよう!