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数分の後、アディは一つ頷いて結論を出し顔を上げた。
「なるほど。何となく分かりました。やはりその封印魔法はテミスが掛けたものでしょう。そしておそらく『開かずの扉』の向こうにあるのは遺跡…だと思います」
「え、遺跡?バーに、ですか?」
フィリウスはスープマグを持ち上げたまま固まって聞き返した。
飲む前で良かった、もう少し遅かったら危うく吹き出す所だ。
「どこから話したものか…あ、ロンデルシカ・テミスはご存知ですか?テミス一族の1人なのですが」
「ロンデルシカ…すみません、初めて聞きました」
自分の研究の過程で色んな論文や学説に触れてきたので、ある程度なら帝国の学者についても知っていたが、流石に専門外の、しかもマイナーな分野の人物までは把握していない。
「いえ、無理もありません。彼はあまり論文を出してませんし、100年も前の方ですから。正直、同郷の俺でも殆ど知りません」
「それって先程仰っていた封印魔法の専門家ですか?」
「えぇ。封印がかけられたのはかなり前との事ですが、具体的に分かりますか?」
「いえ、明確に何年前とは...。ただ店主のお爺様の時代でおよそ100年ほど前らしいですね」
「それなら凡そ合致しますね。ただ、そうなると問題は『帝国の人間である彼が何故この王国の、しかも平民街のバーに封印魔法なんてかけたのか』ですが…そこは一旦置いておきましょう。先に遺跡についてお話ししますね」
「あ、はい。お願いします。基本的な事しか知らないので助かります」
「いやいや、俺も知らないですよ。ただ帝国と王国ではその『基本的な事』が違うかもしれないというだけです。説明するというよりは共通認識の確認ですね。なのであまり期待しないでもらえると...」
「ふふ、分かりました」
いつもの内気に戻ったような控えめな笑顔を浮かべるアディを見て、何となくホッとしてフィリウスも微笑みを返した。
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