Seal

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「まず研究室で話した『貴方の知らない情報』について…申し訳ないですが、これはそんな大袈裟なものじゃないんです。あの時はその、ハッタリと言いますか…」 「そんなハードル下げなくても…」 「だって何か当たり前のことをしたり顔で語るの恥ずかしいじゃないですか」 「当たり前なんですか?」 「まぁ、帝国では…。王国は多分、違いますけど」 「なら有力情報ですよ。聞かせてください」 「分かりました。…先程話した100年前の封印魔法の権威、ロンデルシカ・テミス、彼は生涯の半分を遺跡の封印に費やしたと言われています。帝国中を巡って片っ端から封印して回ったんです」 「遺跡に、封印魔法?」 「はい。理由は分かりません。けれど実際、帝国の遺跡の殆どに封印が掛けられています。王国は違いますよね?」 「はい。封印された遺跡なんて少なくとも僕は聞いた事ありません」 「ですよね。でも帝国の研究者の間では基本なんです。封印魔法といえば遺跡、そしてロンデルシカ・テミスがすぐに連想されるくらいに」 「それでバーの封印も遺跡だと?」 「はい。もちろん、王国にも封印魔法はあると思います。でもそれはごく簡単なもので、バーにあったような強力なものではないでしょう?」 「そうですね。僕でも解けるくらいには簡単です。使い道が金庫とかあとは軍の武器庫とかそんななので、せいぜい『ちょっと頑丈な鍵』レベルでしょうか。強力なものだと古い魔法書だとか手に負えない魔物とかにもかけられてますが、それはかなり昔…もはや古代ですね」 「えぇ。100年前どころじゃないでしょう。となると、あとは簡単な連想ゲームです。強力な封印魔法=ロンデルシカ・テミス=遺跡の封印」 拍子抜けしました?とアディは種明かしをした。確かに簡単だ。けれど、それは帝国の研究者であるアディにしか分からないことだろう。 フィリウスはロンデルシカ・テミスも知らなかったし、遺跡に封印魔法を掛けるという発想すらなかったのだから。
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