Seal

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「その『開かずの扉』の場所に小屋が建てられたとの事ですが、どの位の大きさですか?」 「そうですね…べ、御手洗くらいでしょうか」 「御手洗…まさか御手洗の遺跡なんてことあったりして…」 「なるほど、古代の御手洗ですか。確かに、当時の人々からすれば何気ない、ありふれた物でも今では歴史的価値のある遺産だったりしますしね。確かにその可能性はありますが…」 どんな物でも後世の人間にとっては貴重なものだ。昔の王族の手紙なんかもご丁寧に博物館に飾ってある。大した内容じゃなかったりラブレターだったり、本人には公開処刑でしかないが、貴重な資料扱いだ。 「そうですね。可能性としてはありますが、軍が守るようなものではないですね。それにただの御手洗ならシャルル様が手を出すこともない…」 「しゃ、シャルル様?!どうして…?!」 思いがけない名前にフィリウスは繕うこともできずあからさまに動揺した。 彼の事はまだアディには話していないはずなのに。 「え、だってレディ・リリサが動いてるんですよね?それに、地下水脈を暴走させるなんてすごい魔法が使えるの、あの方くらいじゃないですか」 アディは当たり前のように正解を出した。 「そ、そうなんですか?僕は厳密には魔法使いではないのでその感覚がよく分からないのですが…魔法使いの皆さんにとっては常識なんですか?」 強い魔法と弱い魔法。 生まれつき魔法が使えないフィリウスにはその辺の区別がつかなかった。 指先からチョロチョロと水を出す魔法と大洪水を起こす魔法。どちらがより強いかと言えば後者なのは明白だ。レベル1とレベル100といったところだろう。それくらいはフィリウスにも分かる。けれどその中間、レベル30~70辺りはどうもピンとこないのだ。
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