Seal

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「そうですね。あくまでも体感というか…決まった数値のようなものはないのですが、何となく分かると思います。地下水脈を操作するのはかなり高度ですよ。このマルコット王国で出来るのはシャルル様くらいです」 「なるほど。ならバレバレだったんですね。だからシャルル様も堂々と…」 「堂々と?」 「あ、はい。平民街へ行った時に聞いたんです。噴水の起きた時間と場所に、青髪の貴族がいたって。変装もせず堂々としていたらしくて目撃情報だらけでしたよ。普通はもう少しコソコソするものかと思っていたんですが、なるほど、隠れても意味が無いってことなんですね。どうせ魔法を使えばシャルル様だってすぐにバレてしまうから」 「だと思います。追われる覚悟でやったんでしょう。そこまでして守りたいものが、あのバーの『開かずの扉』の向こうにあった、と」 「守る…?そうか、繋がった!」 フィリウスがスッキリした顔でそう言うとアディは嬉しそうに微笑む。やはり彼には全てを語らずとも通じるようだ。 「物的証拠はありませんが、ここまで状況証拠が揃ってしまえばほぼ確定でしょう。これで俺も胸を張って巻き込まれにいけます。頑張りましょうね!」 アディはやる気に満ちた様子でグッと拳を握った。ここはフィリウスも合わせておくべき所なのだろうが、どうにも不安が過ぎる。 「あの、あまり無茶しないでくださいね。貴方は帝国の方ですし、表立って動くと軍に目を付けられかねませんよ。それに、荒事も得意ではないでしょう?それに関しては人の事を言えませんが」 「分かってますよ。心配ありがとうございます。でも、確かに俺たち肉体労働には向いてないですよね。力づくで来られたら無抵抗でやられる自信があります。膝カックンで死ぬんじゃないかって言われたことあるくらいですし」 「同感です。万一の際はとにかく逃げましょうね。身を守るのが最優先です」 「はい、もちろん。全てを投げ出して一目散に逃げましょう」 ひ弱な引きこもり研究者2人は深く頷きあった。
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