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ごめんね、夏芽。
次行く高校には事情を話してあるから、困ったことがあったら冬雪くんに言うのよ?
今朝そう言いながら泣きそうな父さんと母さんを空港で見送り、そのままタクシーに乗って転校先の浅葱学園へ。
浅葱学園は寮付きの男子高。
普段から一人暮らしと変わらない生活してたから転校はしないって言ったのに、今までとは違う、3年は帰って来れないから寮に入れ、って延々と言われて渋々寮付きのこの学園に転校させられてしまった。
パンフレットで見たけどやっぱりちょっと大きな男子高。門も大きい。すごい…、お金持ち学校かな…?
あ……
「夏芽」
「兄ちゃん…」
少し門を入ったところに立ってたのは従兄弟の冬雪兄ちゃん。グレーの髪でメガネが似合う綺麗な人。
よかった、本当に冬雪兄ちゃんこの学園に居たんだ。これで不安が少しなくなったし、寂しくない。
「ふふ…案内も兼ねて迎えに来たよ」
「ありがとう。わざわざごめんね?」
「夏芽は気にしなくていいんだよ。さぁ、職員室に案内しよう」
「うん…ねぇ、副会長さんってホント?」
「そうだよ。この学園の生徒会に入っておけば就職でも進学でも有利だからね」
「え?会社…継がないの?」
兄ちゃんのパパさん…父さんの兄さん、会社の社長さんだから後々兄ちゃんが継ぐんじゃないの?
僕、その為にこの学園に入ったって父さんから聞いたんだけど…
「いずれは継ぐよ。でもそれまでに色々勉強したいんだ」
まだ少し遠い校舎を見据えながら兄ちゃんが呟いた。
帰国子女だから英語もフランス語もペラペラだし、頭がいいから勉強だって教科書見れば大体理解しちゃうのに…
それでも勉強がしたいなんて偉いな…
僕は高校卒業して、まだ勉強しようなんて思わないもん。
「兄ちゃんはすごいね」
「夏芽が褒めてくれるなんて嬉しいな…あ、ごめん。ちょっと目閉じて耳塞いでてくれる?」
「え、なに?こわいこと?」
「違うよ、ちょっと夏芽に紹介したい人を呼ぶからね」
「うん?…これでいい?」
目を塞いで、目を瞑ったら頭ポンポンってしてくれた。これでいいんだ…。
紹介したい人ってどんな人かな、兄ちゃんの友達かな?兄ちゃんみたいに優しい人がいいな…
って思ってたらまた頭ポンポンってされたから、もういい?って聞いたらもう一回ポンポンされた。
目を開けて、耳を塞ぐの止めたら目の前に知らない人が居た。
「兄ちゃん…この金髪の、ちょっとヤンチャでチャラチャラしてて遊んでそうで、不真面目そうで不誠実そうな人は兄ちゃんの友達なの?」
「知人だよ」
「知ってる人?友達じゃないの?」
「うん」
「うっは…見た目の割に毒舌っ!さすがに冬雪の血筋!オレの名前は浅葱薫、この学園の理事長の愛息子さ!」
腰に左手を宛てて、右手で横チョキを作ってウインクされた。
頭のたんこぶが気になるよ?
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