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跨線橋は本来、隣の上りホームと我が卒業生の並ぶ下りホームをつなぐ役割を果たしていたが、上りホームはすでに取り壊されている。なのにつながる相手を失った跨線橋がまだ残されたままであるのは、やはり年に一度、この卒業式に使用するためなのかもしれなかった。
スピーカー越しに名前を呼ばれた卒業生は、ホームをてくてくと歩いてゆき、階段を上って跨線橋の真ん中に待つ校長先生の前まで卒業証書をもらい受けにいくことになる。ホームを歩いている最中には、両サイドの線路上から座布団、白いタオル、くまのプーさんのぬいぐるみ等がひっきりなしに飛んでくるが、だからといって我が校が、相撲部屋やボクシングスクールやフィギュアスケート強豪校であるわけではない。
他にも歌ありダンスあり、輪投げやり投げあり、小芝居ありドッキリありと、式は盛り沢山な内容となっているが、いずれも我が校の教育内容とリンクするものでは一切ありはしない。
そしていよいよ式の最後、僕ら卒業生は、それまで三年間ずっと頭にかぶっていたお魚の帽子を一斉に空へと投げ放つ。だからといって我が校が水産学校ではないという事実は、もはや言うまでもあるまい。
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