第一話 二次元同性愛者の姉に、恋人を作らせようと思うまで

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第一話 二次元同性愛者の姉に、恋人を作らせようと思うまで

ピピピ ピピピ ピピピ 朝の九時、甲高い音で鳴る目覚ましを止めて、カーテンの外に視線を向ける。 八月七日  夏真っ盛りな陽日だ。昼になれば、冷房の効いた部屋で過ごしていなければ秒単位で脱水症状になるほどの気温になるだろう。 体を起こして、大きく伸びをしベッドを降りる。パジャマのまま部屋を出て、隣にある風乃の部屋に足を運んだ。今日は一緒にショッピングへ行く予定なのだ。 「風乃ー?入るよー」ノックの替わりに声を掛けて、返事も待たずにドアを開く。 朝が弱いため、布団でぐずってるのだろうと思っていたが、ベッドに彼女の姿はない。 その代わりに開いたパソコンのキーボードと机に突っ伏すように眠っている風乃の姿があった。 椅子に座ったまま、布団もかけずに。 液晶画面には、二次元の美少女キャラの画像が数枚写っている。青いロングヘアーに黒縁の眼鏡をかけた可愛らしい女の子だ。姉のLINEアイコンにもなっている、所謂『推し』ってやつらしい。 彼女のこんな姿を見るのは一度や2度ではない。 私は呆れ半分、怒り半分に、彼女の頭を叩いて起こす。 「お、き、ろ!また徹夜したの?」 「ぅわっ、えっ?なに?…きゃあっ」 跳ねるように起き上がった衝撃で、椅子からずり落ちそうになっている。 開口早々情けなく騒いでいるのが親戚一同随一の美少女、花鳥風乃だ。 姉妹なのに似ていない、なんて耳にタコができるくらい言われてきたが、劣等感なんてものはない。だって性格がこんななんだから。 どうせ昨日もネットで画像漁りしているうちに寝落ちしたのだろう。 「今日は一緒に代官山へ買い物に行く約束でしょ?さっさと準備する!」 「えっ、なに?代官山って」 ようやく冴えてきた眼でパソコンを操作しながら言う。その美少女キャラの画像をスマホに転送しているようだ。 こっちの話など少しも耳を傾けていない。 「昨日言ったでしょ、明後日充とデートだから服選ぶの手伝って、って」 充とは私の彼氏のこと、自分で言うのもなんだがかなりラブラブだと思う。 しかし姉は私たちの仲をよく思っていないようだ。 「男の子のなにが良いって言うの?やっぱり女の子でしょ。 私ね、恋愛こそ同性同士でやるべきだと思うの。だってね「はいはい分かったから、取り敢えず準備して、半には家出るから」 それだけ言い残して部屋を出る。 風乃の恋愛対象は二次元の美少女なのだ。 男よりは女が好き、現実よりは二次元が好き、の理論で中学生から今までで出来た『嫁』ってやつはざっと20人は超えるらしい。 優柔不断で惚れっぽい、風乃はそんな人だ。 自室へ戻って着替えとヘアセット(ボブなので跳ねを抑えるのが大変だが)を10分で済ませると、再び風乃の部屋へ向かう。 ドアを開けると、パジャマのままネットサーフィンに夢中になっている風乃が目に付いた。 なんの進展もしていない彼女の姿に、怒りしか湧いて来なかった。 「準備してろって言っただろー!」
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