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3  高校二年のクラス替えの発表。 「きゃー、ユキと同じクラスだ」 とカオリが両手を広げている。私達は掲示板の前で抱き合った。  カオリと同じクラスになるのは2年ぶり。中三の時以来だ。  馬の合う友達っているものだ。  隣にいるだけでお互いの出す空気が溶け合っていく感じがわかる。だから嬉しいことも悲しいことも悔しいこともムカつくことも全部言える。  何でもずばずば言えるから、時々ケンカにもなる。それでもいい。すぐ仲直りできるから。  新学期が始まった。  周りの友達は何となく浮ついている。窓から見える校庭の桜が咲き誇っているからだろうか。部活で後輩ができるからだろうか。  でも最近、私の気分は何となく重い。  ある日の昼休み。  私はカオリと二人で弁当を食べながら言った。 「女子が一生懸命勉強するのって、将来なんの役に立つんだろう?」 カオリが箸を止めて私を見つめている。お弁当の玉子焼きが箸で掴まれたまま、行き場を失っている。 私は構わず続けた。 「だって、昨日のテレビで言ってたもん。女は結婚して、家庭に入って立派に子どもを育てるのが一番の幸せだって」  トーク番組で、子育てと仕事を両立していることを『売り』にしている女優がそう言っていた。 「確かにそうなのよね。子どもを生んで育てるのに、一生懸命勉強して一流大学を出ても全然、役に立ちそうもないし…。カオリもそう思わない?」 カオリは再び箸を動かしながら、 「新学期早々、ヘビーなこと考えてるね。ユキらしくないなぁ」 と関心なさそうだ。相手にしてくれない。 「カオリはいい大学行くために受験勉強、頑張るの? でも結婚して家庭に入れば学歴なんて関係ないじゃない」  高二になるとそろそろ受験勉強のことを考えなくてはいけない。夜中の一時とか二時とか、それこそ死にもの狂いで頑張って勉強する人もいるらしいけど、女の場合、本当に意味のあることなのかしら。最近、そんな疑問が湧いてきて仕方がない。
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