説明と描写の違い

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説明と描写の違い

 さて、小説を書く上での気構えのようなものは前回お話しさせて頂いたので、いよいよ小説を実際に書く方に移っていきましょう。  第二回となる今回のお題は、「説明と描写の違い」です。  私は専門学校などに通わず、ずっと独学で書き続けているので、認識に誤りがあるかも知れませんが、説明は「客観的事実を書いた文章」、描写は「読み手の想像力を膨らませる文章」だと思っています。  ちゃんと描写ができている(と思われる)例文を出してみましょう。   暗がりの中に、死の形相も凄まじい彼らの唇が浮かび、   大きく口を開いて凄惨な警告の叫びをあげていた。      (ジョン・キーツ 『つれなき美女』)  これは詩の一部なので、小説ではないのですが、手持ちの本で著作権の心配をしなくていい作家さんのものがあまりないので、ご容赦下さい(会話と地の文からなる、小説に近い体裁の詩なので、一応例文としては妥当かと思いますし)。  この文章を説明的な文章に書き換えてみますね。   暗がりの中に、彼らの唇が浮かび、   大きく口を開けて警告を叫んでいた。  いかがでしょう?  基本的な意味は同じですが、やはり原文の方が必死な様子が伝わってくるのではないでしょうか?  場の雰囲気を表したり、キャラクターの心情を表したりする時に欠かせないもの、それが描写だと思います。  何となく頭ではちゃんと理解できたつもりになっていたのですが、実際自分で書いてみると全く書けていなかったらしく、当時自作の小説を読み合っていた後輩に「佳景さん! これは描写じゃなくて、説明ですよ!」と何度もダメ出しされました。  当時は短編から長編を書き始めたばかりという、「駅伝しか走ったことがない人が、いきなりフルマラソンに挑戦している」ような状況だったので、とにかく書き上げるだけで精一杯で、書いている内にいろんなことが飛んでしまっていたんですよね。  あまりにも下手過ぎて、当時の自分に硫酸をぶっかけてやりたいくらいの黒歴史ですよ、HAHAHA!  正直こんな創作の黒歴史は封印しておきたかったですが、「これだけ下手な奴でも、頑張れば後に三次選考まで残れたりするんだ」と希望を持って頂けたらいいかなと思うので、人生の一部を積極的に切り売りして行く所存です。    ちなみに対応策としては、とりあえず早く長編慣れするように小説を書き、並行して本の文章を真似て書き写すということをやっていました。  流石にそのままの文章を小説に書いてしまうと、(著作権切れになっていない限り)まずいことになりますが、自分より上手い文章を書いている内に、文章の書き方のコツのようなものが多少なりともわかった気がします。  後輩は好きな作家さんの本を一冊まるごと書き写したりしていましたが、私はそこまで真似したくなる程好きな文体の作家さんがいなかったですし、一冊写し終わる前に挫折しそうだったので、もう少しお手軽にシェイクスピアの詩集などを書き写していましたね。  「一番お気に入りの魔王をちゃんと書きこなす」という目標があったので、「時の大鎌が命を刈り取るまで」みたいな、魔王に合いそうな大仰な表現を身に付けようとしていました。  その一環で、書き写しはしませんでしたが、ALI PROJECTさんの歌詞を読み込んだりもしましたよ。  その結果どうなったかは、現在公開中の『その手に取るもの』をお読み下さればわかって頂けるかと思います。  はっきり言って、描写より説明の方が簡単なので、ついつい描写すべきところを説明しがちになって、こつこつ推敲時に修正する羽目になるのですが、やはり手抜きは良くないので、毎回頑張って直していますね。  まあ、舞台が現代日本で、ごく普通の人という設定の主人公の一人称だと、「あんまり凝った表現にしない方がそれっぽくなるかな」と、あまり修正しなかったりしますが(笑)。
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