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キャラクターになりきる
さて、第四回目となる今回も前回に引き続き、キャラクターに関するお話をして行きましょう。
今回のお題は「キャラクターになりきる」です。
三人称で進んで行くタイプの物語もあれば、一人称でキャラクターと喜怒哀楽を共有しながら進む物語もあり、一概にキャラクターになりきる必要はないと思いますが、私は後者の物語を上手く書けるようになりたいと思っているので、そういう方にはキャラクターになりきることが必須になってくるかなと思います。
作家さんとは方法が違いますが、キャラクターを表現することにかけては作家さんに引けを取らないであろう役者さんも、やはりキャラクターを演じる時には自分の感情をキャラクターに寄せるように努力されるようですしね。
声優さんでいらっしゃる古谷徹さん(『名探偵コナン』安室透役など)が、以前インタビューで「ラブストーリーの時は、まず相手の女優さんを好きになるところから役作りを始める」とおっしゃっていて、「流石だなあ」と感心したものです。
「餅は餅屋」とも言いますが、作家さんとは少し異なるであろう役者さんの知見には学ぶべきところが多いと思っているので、よく参考にさせて頂いています。
実は私、専門学校に通ったりはしていませんでしたが、かつて声優さんになりたいと思っていた時期があって、その名残でキャラクターを演じるようなつもりで書いていますしね。
さて、ここからまた私の創作の黒歴史を披露していくことにしましょう。
新人賞応募用の作品はその一作で一つの物語として完結させて、その後を書くことがないので(賞でも取れたら話は別ですが、落選した作品にしがみ付いていても時間が勿体ないので、続編は基本的に書きません)、ドライな性格の私は「初めから短い付き合いだとわかっている相手に、そこまで入れ込めないわー」と、なかなか感情移入できずにいました。
「キャラクターになりきろう」という気持ちだけはあったのですが、どうしても冷めた視点が消し切れないせいか、自分が書いた文章を読み返しても、読み手を泣かせたいシーンで全然泣けないということが続いていたんですね。
そこで私が目を付けたのが、魔王でした。
プロフィールにも書いていますが、奴は私の一番のお気に入りキャラです。
しかもどんな世界のどんな物語にも登場できる、ご都合主義的便利キャラときているので、とにかく魔王を登場させて、愛の力で(笑)この創作の壁を乗り越えようと考えた訳ですね。
今までと同じように書いていても新たな地平は開けないと、魔王のキャラクターが崩壊する寸前までああでもないこうでもないと魔王を弄り回し、「あ、これ設定と矛盾するからボツだわ」と気付いて書き直したりしていたのも、今となってはいい思い出です(笑)。
結果、以前つぶやきにも書かせて頂きましたが、現在公開中の『communio』の終盤で唐突に魔王のキャラクターが掴めたと直感したので、「今ならちゃんと魔王になりきって書ける! ここでコツを掴めば、魔王以外のキャラクターもちゃんと書けるかも!」と思って書いたのが、同じく現在公開中の『その手に取るもの』でした。
二〇万字近くも書けば、いくら物覚えが悪い私でも流石に身に付いたようで、友人には「あれ(『その手に取るもの』)から小説のレベルが前より一段上がった」と褒めてもらえましたよ。
私の場合はキャラクターになりきる時、プールで全身水に浸かる時のようにキャラクターの中に沈む感覚を覚えるので、それができている時はちゃんとキャラクターになれているなという目安もわかるようになりました。
私のように何年も何作もに渡って同じキャラクターを書き続けている方は少数派でしょうし、決してオススメはしませんが(笑)、お気に入りのキャラクターで創作の壁の一点集中突破を狙うのも、一つの手だとは思います。
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