造語を使う

1/1
80人が本棚に入れています
本棚に追加
/92ページ

造語を使う

 さて、第八十八回目となる今回のお題は、「造語を使う」です。  ファンタジーやSFなど、既存の言葉では上手く説明できない概念や物が登場する物語の場合、作中で造語が使われることがよくありますね。  世界観の雰囲気を壊さないように一役買ってくれるものではありますが、アルフレッド・ベスター作『虎よ、虎よ!』で、テレポーテーションを「ジョウント」と呼んだような、ほぼラベルの貼り替えに近い造語を使う必要があるかどうかに関しては、議論の余地があるように思います。  まあ、『虎よ、虎よ!』はかなり古い作品なので、当時はまだ「テレポーテーション」という言葉が一般的ではなかったのかも知れませんし、「敢えて造語使うんだ!?」と驚いて、とても印象に残ったので、アレはアレとしてアリなのでしょうが。  造語の使い方は、それぞれの書き手さんの好みやスタンス次第ではあるものの、私は読み手としての経験から「文字を見て、大体の意味が理解できる造語」でないと覚え難いと判断して、基本的に「魔法使い」のような一般的な名詞を使い、地の文などで「この世界における魔法使いは、こういう存在である」と定義するようにしています。  「いやいや、自分としては敢えて造語を使って、オリジナリティーを出したいんだよ」という方もいらっしゃるかと思いますし、その考えを否定するつもりはありませんが、あまりに造語を出し過ぎるのは読み手さんを混乱させてしまいかねないので、オススメしませんね。  異世界を舞台にしたファンタジーだと、「長さや重さなどの単位をどう書くか」という問題もあって、単位に造語を使う書き手さんもいらっしゃいますが、私は「十歩くらいの距離」というような書き方をして、基本的に単位は書かないようにしています。  一度作中で計算式を書かねばならなかった時には、下手に造語の単位を使ってしまうと、式に注釈を付ける必要が生じてしまい、見辛くなる上にわかり難くなると判断したので、敢えて私達が通常使っている単位を使いました。  世界観を壊さないことも大切ですが、読み手さんが覚え易く、読み易いことが一番大事だと思うので、造語はその辺りのバランスを考えながら、使って頂けたらいいのではないかなと思います。
/92ページ

最初のコメントを投稿しよう!