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自分なりの意見を持つ
さて、第九十回となる今回のお題は、「自分なりの意見を持つ」です。
以前某新人賞の選評で、「小説家になるなら、世の中のいろいろなことに対して、自分なりの意見を持つようにした方がいい」というようなことをおっしゃっていた審査員さんがいらしたのですが、確かに書き手さんなりの意見が示されている作品は、素晴らしいものになり得る可能性があると思います。
伊藤計劃さんの『虐殺器官』というSF小説があるのですが、この作品は正にそういう作品で、とある一文を読んだ時に自分の心の内にある醜い部分を切り取って、目の前に突き付けられたような衝撃を受けました。
2001年にアメリカ合衆国で発生した同時多発テロ以降の世界を生きる、多くの人々の胸に突き刺さるであろう一文は、作者である伊藤さんの胸にも深く突き刺さったと思いますが、その鋭さが大変素晴らしく、今でもとても印象に残っている一冊です。
惜しくも小松左京賞(現在は休止しているSF小説の新人賞)の受賞は逃してしまったものの、後に出版され、とても高い評価を受けた作品なのですが、ああいう作品は世の中や人の心の内をしっかり見つめて、自分なりの考えをしっかり持っている書き手さんでないと書けない気がしますね。
決して小難しいテーマではない、「愛」や「友情」といったようなありふれたテーマを書く時でも、自分なりの「愛」や「友情」がしっかり書ける書き手さんの作品はそれだけで面白かったりするので、やはり自分なりの意見を持つというのはとても大事なのだろうと思います。
自分なりの物の考え方というのは、なかなか他の誰かが真似できるようなものではないので、プロとして活躍したいという方は日夜ニュースを見たりして、いろいろなことを考える癖を付けておくと役に立つでしょうし、ネタに困ることもなくなるのではないでしょうか。
読み手さんがはっとするようなものを書ける書き手さんは、プロの中でもそう多くはないので、そういうものを書けると、凄い武器になると思いますしね。
小説を書くというのはかなりの頭脳労働ですが、それが苦にならない方でないと長続きしないと思うので、「まだ小説を書き始めたばかり」という方は、まずはいろいろなことを考える習慣を付けるところから始めてみるといいかも知れません。
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