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「私にはわからないけどさ、それでも想像はできるよ、誰かが暗い顔していたらこの人は今、悩んでる、傷ついてる、苦しんでる、後は、たのしそうとか、やっと笑ったとかさ」
そんな感じの探りかたしかできない。
「それってよっぽど暗い人生送ってる人だね、同情に値するような」
「だから、かのんはまだいいのよ、まだまだ安心よ、だってそんなにダメージ受けてないでしょ」
まだまだ明るさがある、横にいるかのんにはちゃんと秘めた強さがある、そういうのがはた目から見てもわかる、だから安心していられる。
「私なんかもうボロボロだよ、髪も爪も、身体の中も心の中まで、ぜんぶで傷んでる、病みすぎてる、その痛みで夢の中までうなされてる」
「ここにいたくないって? 逃げ出したいって? 理沙はそんなこと考えてるの?」
かのんの目が鋭くて、ごまかしてもぜんぶを読まれてしまいそうで。
「わかんない、まだそこまでは、でもね」
慌てて目をそらしてしまう。手に持ったバッグには小さなコンビニで買ったパンとペットボトルのウーロン茶しか入ってない。いつ頃からかそれ以外、荷物を持たなくなった。
「その先の言葉は続けないで、聞きたくないから、そういうのに影響受けたくないから」
「かのんは強いからいいんだよ、私はもうギブアップ前かな」
口に出してしまうと錯覚でも少しだけ楽になったような気がした。
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