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まだ寒さが残っている、春のあたたかさが待ち遠しいくらいに。
「私さ、思うんだ、理沙はさ、昔何があったかいってくんないけど、まあ、私も聞きたくないけどさ、そういうの引きずってるんじゃないかな、トラウマみたいにさ、それでまた今、他を見ちゃってる」
「そっかな、だけど今は逃げることばっかりだよ、いつ逃げようか、今逃げようかってさ」
この先を進めば小さな食堂があり、その先には住宅街が密集している。
「毎日それじゃ楽しくないね、私ならもっと前向きになる、楽しいこと考える、どんなに暗い場所にいても、楽しいこと考える、馬鹿な奴ら相手にまじめに被害者やってもしょうがないし、そんな奴ら自分で潰れちゃえーーくらい」
かのんは飲みおえたのか缶ジュースを右手で音を立てながら潰した。すぐそばにある自販機にそれを投げ捨てた。
「そんなに強気になれないし」
「理沙は深刻? がまんできないくらいに」
「さあ、どうかな」
私は横に並んで歩くかのんに歩調を合わせていた。男みたいに早く歩く、そういうかのんの方がホントはもっと痛んでるのかもね、
私なんて愚痴ってばかりだし。
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