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留守のビデオ電話
「………っう………」
眠っていた目を開け、上半身を起こす。
「………もう夜かよ」
最近はコロナの為、仕事が完全にテレワークになって仕事をし終えれば暇ができるとは言え、さすがに寝すぎだ。
「それに、部長が夜に資料届けるって言ってたな……」
少し憂鬱になりながら、テーブルの上にあったpc
を開き仕事を始めようとする。
「ああ、あったあった、これか、…………うん?」
仕事のファイルが来ているのを確認すると、それとは別にビデオ電話がかかってきていた。
……寝てる間にかかってきて、留守電にしてしまったか?
「……まぁ、またアイツらだろう」
俺には、妻と1人の娘がいて単身赴任中の為、数日に1回はビデオ電話をしてくる。
「後で、かけ直すか……」
そう思いながらそのビデオ電話を見てみた。
「お父さん!!」
小学4年生らしい元気のいい声で呼ばれた。
やはり、画面に映り出されたのは妻の葵と娘の小春だった。
「今日ね、学校で国語のテストがあってそれ100点だったの!!それとね、ピアノのコンテスト、先生が出ていいだって。」
「ピアノ?……そんなことも始めてたのか。」
育児の事は葵に任せっきりだから知らなかったけど、習い事を増やしたのか?
「お父さんピアノ出来るでしょ、お父さんにまけないように頑張るから!!」
そういえば、何回か目の前で演奏した事があったけな。
「そうだ、お父さんお誕生日だったよね、
でね、じゃあ~~ん!!うさぎさんの人形つくりました~~!!お父さん喜んでくれたらいいなー。」
そういえば、今日は俺の誕生日だったか、一人暮らしをしていると自分の誕生日すら忘れてしまうもんだな。
娘が作った兎の人形は画面越しに見た限りだと良く作られていた。
おそらく、葵と一緒に作ったものなのだろ。
「お母さん、お父さん喜んでくれるかなー?」
「ええ、………喜んでくれると思うわ………。」
その時、
葵は
泣いていた……
「………お母さん、お父さんに届くよね」
「ええ、……きっと………」
葵が顔を手で覆い泣き崩れる。
その時、俺は気づいた。
いや、思い出された
葵が泣き崩れた理由に……
(俺、死んでたんだ)
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