留守のビデオ電話

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………1年前 俺はある人物に殺された。 あの日、俺は新型コロナの影響で自粛要請が出されテレワークをしていた。 「ピンポーーーン」 今思えば、自粛ムードの世の中人が尋ねること自体不思議に思うべきだったのかも知れない。 しかし、 安全な時代に慣れてしまった俺は、 覗き穴もろくに確認せず扉を開けてしまった。 その時だった。 「え…………」 自分の体に何かが突き刺さった。 それは、 小さな果物ナイフだった。 みぞおちに刺さったそれは、 傷を不用意に抉り、 傷は焼けるように熱く、 痛みは消えゆく意識をこの世界に留めさせていた。 俺を刺した人物は、黒いフードを深く被り、 黒いマスクをして、顔が見えない。 その人物はそのまま俺を押し倒し、 俺は玄関に倒れた。 例の人物は、そのまま俺にまたがり果物ナイフ、 再び突き刺さす。 またがられたことで、今まで見れなかった顔を 見てしまった。 体は冷たくなり、意識が遠のく。 そんな中、俺の意識はある物に支配された その顔には見覚えがあった。 忘れるわけが無い。 その顔……… 間違えるはずがない。 その人物…… 俺は無意識にその名前を口に出していた。 「葵…………」 消えゆく意識の中、 最後に見たのは、 嬉しそうに俺を殺す妻の姿だった。
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