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「え、あっ、ありがとうございました。あの、香水、教えていただいて助かりました」  おや、というように瞳を見開いた彼は私の腕から離した手を腰に当てて、首をかしげ、 「イエ、どういたしまして。手に入れた?」 「はいっ、結構、人気の香水だったんですねー」  彼は、瞬きをして、私を真っすぐ見つめ、ふっと頬を柔らかくして口元に笑みを浮かべた。  急に人懐っこくなったその表情に見とれていると、 「男女、選ばないユニセックスのだからね。自分、つけるの?」  ぱっと、自分が笑顔になるのがわかった。すると彼もつられるように微笑んだ。  (女の子でも、いいんだ、つけても。あ、でも、なー)  無意識にふわっと彼から、視線を外した。    「えー、イヤ、自分、ではなく……、側にというか、ここぞという時とか、かな……っと」  上の空で独り言のようにつらつらと出てくる言葉に驚いて、口を閉ざして、彼を見る。 私の視線に気づくと、くいっと、顎を上げて、口元をゆがめるように引き上げた。  その変わった表情は、意地悪を企んでるようで、なんだろう、急に逃げ出したくなった。
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