第1話.空き家の謎

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 準備は本当にそれだけのようだった。なんとお手軽な時間旅行であろうか。老人はなんとも簡単に「さあ、行ってこい」と言って、懐中時計をチルに手渡した。 「え?お爺さんは行かないの?」  ミリーは驚いて尋ねた。老人は少し考えて、それからこう言った。 「俺は行きたくても行けねえんだ。なんせ40年前も俺は生きていたからな。法律違反になっちまう」  3人は不安になって、黙りこくった。 「大丈夫だ、ここの屋敷の主人は俺の知り合いだから。おっとそうだ、ついでにこいつをここの娘に渡してやってくれ」  そう言って老人は貝殻でできた腕輪をミリーに手渡した。 「簡単な手土産だ。そいつを渡してやればきっと大丈夫さ」  ミリーは真剣な面持ちで頷いた。 「よし、じゃあ、そろそろ行こうか。もたもたしてると時間はどんどん減っちまう。時は金なり、だ。それと日が暮れる前には帰ってこい。森を抜けられなくなっちまうからな。そのボタンを3回押せば、またこの場所に戻って来られるから」  3人はそれぞれに返事をした。ほとんどは緊張してうまく声になっていなかった。  3人は懐中時計を掴んで、親指を金具の上に重ねた。 「わたし、時間を戻るのなんて初めて」  ミリーの言葉に2人は頷くだけだった。 「じゃあ押すぞ。せーの」  プンスターの掛け声とともに、3人は親指に力を込めた。瞬間、辺りはまばゆい光に包まれて、3人の姿は跡形もなく消えた。  古びた屋敷の前に1人取り残された老人は、満足げに笑みを浮かべていた。
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