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当初、魔女は使い魔として雇い、またはペットとして飼うことにした黒猫を大変可愛がった。それこそ我が子を溺愛するかのように・・・しかし、やがて本来の残忍性を黒猫にも向け、可愛さ余って憎さ百倍とばかりに黒猫を苛めるようになった。
それがエスカレートして遂に黒猫の両眼を刳り抜いてその代わりにエメラルドを眼窩に嵌め込むに至った。
黒猫に激痛を与え黒猫の目を見えなくすると共に自分の目を楽しませる為であった。
なんというエゴイスティックで冷酷非道なのだろう。
魔女だから当然と言えば当然だが・・・
で、魔女の虐待に耐え切れなくなった黒猫は、優しさを求めて魔女の館から出奔した。
それからというもの黒猫は目が見えなくなったお陰でより発達した嗅覚を頼りに海を目指した。
道中、人間に不吉の象徴とされ欧州の各地で苛められ、殊にベルギーのイーぺルに来た時、迷信深い人間に捕まって「猫の水曜日」の行事に倣って時計台から投げ落とされたことは黒猫にとって恐怖の極みだったが、使い魔の能力を発揮して見事着地した。
そんなこんながあって黒猫は港へ着くと、使い魔の能力に因り人間の会話を理解し、日本へ渡る貨物船を探し出して荷物に紛れて乗船することに成功した。
渡航の間、飲まず食わずの試練を耐え忍び、日本への密航を果たした。
日本人は欧州人と違って黒猫を福猫として飼ってくれる噂を耳にしたことがあるからだ。
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