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「高木さん、1番に奥田様から電話です」
隣席に座っている町田が、何度か瞬きをして、菜々緒に声をかける。
首を傾げると、からかうように菜々緒と同じ方向に首を傾げた。仕事中とは思えない楽しそうな表情に、ため息をついてしまう。
「……1番ですね?」
面白がっている町田の視線を振り切り、通話ボタンを押す。
「はい、高木です」
『あ、俺、だけど。仕事中にごめんね』
うっと息を飲んだ後、ひとつ吐息をついて、声を潜める。
「巧?……仕事場に電話をかけてくるって、どうしたの? 」
『……その、今夜、菜々緒と会って話したいことがあったから。早く連絡したくて……』
彼が急ぎで話がしたいなんて、用件はひとつ。小声でボソリと呟く。
「お金?」
『……まだなんにも言ってないのに』
「お金の話じゃないの?」
『……そう、かもしれない』
嘘がつけないバカ正直なところも相変わらず。と言っても、会っていない期間は10日ほどだから変わりようもない。
菜々緒は頭を切り替えるために、一呼吸おいてから、口を開いた。
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