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母は病気で亡くなったと私に伝えたが、それは嘘だと子供ながらに勘付いていた。父はこの世界の何かしらに絶望し、自らで命を断ったのだ。
葬儀から三年後。母の再婚から新しい家族となった義父とサクが、私たち親娘を守る存在だと感じるようになった。
何を考えているのかは分からないけれど、温厚で優しい義父と、大好きなサク。私と母の大切な家族だ。
「美紅、それ何?」
「……え?」
不意にキッチンから母の声が飛んできた。目はテレビに向いていたので、若干反応が遅れる。
母は自分で確かめた方が早いと感じたのか、私のすぐそばまで歩み寄り、ローテーブルに置いたままの箱を持ち上げた。
サクが置いていった差し入れのシュークリームを無表情に見つめている。
「あの子、また帰ってきてたの?」
「あ、うん。私は食べたから、後はお義父さんとお母さんの分だよ」
「ふぅん」と呟き、母は箱ごとそれをゴミ箱に持って行く。バサっと音がして、途端に嫌な気持ちが広がった。
サクと母はある時から馬が合わない。血が繋がらないとかそういう理由からじゃなく、原因はあの事にある。
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