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私の気持ちを見透かすように、まざまざと私に見せ付けるように、美人でか弱い雰囲気の女子を連れて来て、「俺の部屋には近付くなよ」とキツい口調で窘めた。
サクが女の子を家に上げるのは決まって母がパートに出ている時間帯なので、私さえ言わなければバレる事は無かった。私以外に、サクを咎める存在は誰もいなかった。そのはずなのに……。
ある日。ふらっと帰宅した母がサクの情事を目の当たりにした。サクは母から大目玉を食らったそうだ。
何度も言うが、母は家の中が汚れるのを極度に嫌う。その日から母にとってサクは汚らわしい存在となった。
私は複雑だった。
悪い事は必ずバレる、罰は当たると悪魔の私はサクをいい気味と嘲笑い、天使の私は、母に叱責されて冷たい態度であしらわれる彼を、可哀想と同情した。
しかし、サクはしぶとかった。
混沌とした家庭が続く中、サクは全く悪びれる様子も無く、殊更慎重にだけなって、また同じ事を繰り返していた。
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