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連れ立って主室に戻る。
いつの間にか午後の雨は止んでいたようだ。窓から秋の夕刻の日の光が柔らかく差し込んできていた。
季節は異なるはずなのに既視感を覚える。
「ラル。久しぶりに君のピアノを聴きたいな」
最初にオリヴィエの心を奪ったあの音色。
窓を見つめながら洩らされたオリヴィエからの依頼に、ラウールは小さく笑った。
「長らく鍵盤に触れていない。……もう、なまっている」
「いいよ。君の音が聴きたい」
「だったら、練習から付き合ってもらおうか」
「うん。望むところだ」
顔を合わせ笑いあう。
そして自然と唇が重なった。
この先。
二人で歩む時間は、これまでよりもきっと長い。
第一話 秋の夜会を君と ー了ー
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