第二話 正暦一七九六年四月(芽月) 春の日に君と秘密を(改稿版)

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 その太股を手で押さえ、オリヴィエは咥えたペニスを軽く吸った。そのまま唇をすぼめ、口内で舌も使いながら上下させる。ますます固くなった先端からは彼の蜜が溢れ始めているのだろう。口腔に潮の味が広がった。 「くぅ……うぅ……」  必死に声を出すのを我慢し、歯を食いしばるラウールの口から苦しげな唸りが洩れる。  ──我慢できるのも今だけだよ。  部屋に連れ込んだ時には、どうしようかと少し悩んだ。  けれどいざことを始めてしまえば、経験者として、追い立てる者として余裕を持つことができた。  この怜悧な美貌の同級生をどう喘がせよう。  彼はどんな魅惑的な声で泣いてくれるのだろう。  この手に堕ちた時、どれほどの淫らがましい醜態を晒してくれるのだろう。  ……どんな香りを発するのだろう。  期待で胸がひりつく。 「……っ!」  息を詰まらせたラウールの身体がびくんと震える。  口内で射精されても慌てることなく、オリヴィエはラウールの鈴口を強く吸った。彼の精液を残すことなく出させる。  ラウールは腕で顔を隠し、荒い息をついていた。  精液など決して美味いものではない。それがいっそ飲み込んでしまいたいほど美味に思えるのはどういうことだろう。  ──初めてのものを、惜しいけれど。  オリヴィエは口の中の精液を右手のひらに出すと、閉じかけていたラウールの脚を再度開いた。ペニスの奥に潜む彼の後孔に手をやり、唾液と混じった白濁した液を塗り込む。  びくりと身体を揺らし、ラウールの顔がこちらを向いた。  そこには、好奇心の強気が剥がれた、弱気な不安に揺れる菫色の瞳があった。  ひりつきは更に増し、息苦しさを錯覚しそうだ。  オリヴィエは身体を伸ばすと、彼の耳元に囁いた。 「ラウール。本番はこれからだよ」  ラウールは何か言おうと口を開いたが、それを唇を重ねて塞いだ。  僅かな抵抗も、口腔を愛撫することで解ける。  その様子を見て取って、オリヴィエはラウールの蕾に指を一本差し入れた。  再びラウールに恐れが訪れる。それを舌を絡めるねっとりと柔らかなキスと、射精したばかりのペニスを優しく刺激することで遠ざける。 「あ……ぁ……ん……」  ぎゅっと瞳を閉じ、白い喉を仰け反らせたラウールが甘さを含んだ吐息を洩らした。  彼の香りは濃度を増し、身体は熱を持ってじっとりと汗に濡れている。  彼の陥落の兆しに興奮がいや増す。  オリヴィエはラウールの喉に唇を寄せると、シャツの襟できわどく隠れそうな位置をひときわ強くちゅう、と吸った。
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