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「あっ……やぁあああああっ…………!」
指を三本まで使ってすっかりほぐれた後孔に、オリヴィエの屹立したペニスの先を押し入れると、ラウールの口からは悲鳴が溢れた。
悲鳴と同時に、辺りに漂っていた花の香りは霧散した。
熱い肉壁がオリヴィエの先端を迎える。
ゆっくりと腰を前後させ、狭くぬらぬらと濡れた内壁を進めるたびに、ラウールは嗚咽を洩らした。苦しさに見開く菫色の瞳からは、透明な涙がぽろぽろと零れる。
唇で涙を掬う。
しょっぱいはずなのに、微かに薔薇の香気がする砂糖菓子のようだった。
「ラウール、大丈夫。大丈夫だから……」
オリヴィエの荒い息を伴う言葉に、ラウールはまるでいたいけな子供のように弱々しく首を振った。そんな彼の姿は、オリヴィエの胸の中に今まで抱いたこともない思いを生まれさせた。
言葉にできない思いに駆られ、オリヴィエは涙でぐしゃぐしゃになったラウールの顔、乱れてほつれる白金の髪に何度もキスをした。そんなオリヴィエの汗にまみれた背中に、ラウールも両腕ですがりついてくる。
やがてオリヴィエのペニスは、根元までずっぷりとラウールの中に入った。
一旦ほっと息をついたオリヴィエの下で、ラウールは目を閉じ浅く苦しげに呼吸していた。
汗で白金の髪が張り付く額にキスをすると、ラウールは薄く目を開いた。
「僕のもの、全部君の中に入ったよ」
オリヴィエが教えると、ラウールは眉を顰めたまま再び瞳を閉じ、深く息を吐き出した。
「……苦しい」
「うん。初めてだもんね。でも、もう少し辛抱して。絶対よくしてあげるから」
そう告げると、ラウールは菫の瞳を開いてオリヴィエを見つめ、憔悴した顔に力なく微笑みを浮かべた。
一度は消えた香気の粒子が、かそけく空気に溶け出す。
「……うん。君を信じる」
こんな状態で絶対など、オリヴィエにとっても強がりだ。
けれど何の疑いもなく、無条件にラウールはオリヴィエの言葉を信じてくれている。
──失望されたくない。
そう思った。
彼の信頼を裏切りたくない。
オリヴィエは微笑むラウールの口許に唇を寄せた。ラウールも口を開いてキスに応じる。
ラウールがオリヴィエの唇を甘噛みして吸う。オリヴィエもラウールの唇を己の唇で優しく挟み、彼の歯の裏をゆっくりくまなく舐めていった。
溢れる唾液を、ラウールが喉を鳴らして飲み込む。
もっと、と言葉なくせがまれ、開いた口を深く重ね合わせ互いの舌を絡め合わせた。
柔らかく、甘い。
──こんなに気持ちのいいものだったんだ……
今まで適当な相手と交わしてきたキスなど、まがい物だったのだと思い知る。
自分の欲求を満たすだけではない。『自分』が相手に求められる悦び。
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