第二話 正暦一七九六年四月(芽月) 春の日に君と秘密を(改稿版)

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 キスをしながら、オリヴィエはラウールの引き締まった腰を抱き上げた。  そして、細心の注意を払いながら再び抽挿を始めた。  苦しさにラウールの白金の柳眉がまた顰められる。けれど彼は、オリヴィエにその身を委ねてくれた。  ラウールの苦しさを少しでも減らすように注意深く、そして丹念に。先ほど指でほぐしている最中に見つけた、彼が反応する場所を探る。  身体を動かすたびに、ラウールの精液で中まで濡らした後孔はくちゃくちゃと湿った音をたてた。  やがて。 「あ……」  微かな声を上げ、ラウールの腰が震えた。  ラウールが右手でオリヴィエの手首を握る。 「ここ?」  身体をゆすりながらオリヴィエが尋ねると、ラウールはこくんと頷いた。  答えを得て、オリヴィエはラウールの示した場所を重点的に攻め始めた。彼に無理はさせたくないといっても、オリヴィエ自身も、きつく締まったラウールの中で限界に近かったのだ。  反応はすぐに表れてきた。  苦痛に縮こまっていたラウールのペニスが膨らみ始める。  苦しさの呻きが占めていた吐息にも、甘やかな声が混じる。  彼を屈服させ、肉欲の快楽に堕としてみたい。  堕ちた彼の姿を見てみたい。  そんなことも思ってはみた。  けれどそれは、オリヴィエの見栄が生み出した浅はかな願望に過ぎない。  本当はただ、日の光の下でいつも涼やかな自信に満ちていた彼の、明るく輝く冷たい仮面を剥がされた姿を知りたかったのだ。  音楽室の窓からの光にきらきらと輝いていた白金の髪。  柔らかく微笑んだ菫色の瞳。  自分以外の誰かも知れるような、そんなもの以外に。  そしてまた、彼には誰も知らない『オリヴィエ』を感じて欲しい。知って欲しい。  匂い立つような薔薇の香りが生まれている。  ──これを感じた時に。  もう、自分は彼に陥落していたに違いない。  そう自覚しても、悔しさはまったくなかった。 「オリヴィエ……!」  腕を伸ばしてきたラウールに、蕩けそうな声で名を囁かれた。それだけで興奮が倍増す。  亀頭が彼の後孔の入口に引っかかるほどまでにペニスを引き出し、そこから最奥まで一気に突き入れる。そのたびにぐちゅぐちゅと音を立てるが、一度オリヴィエの形を知ったラウールは、自らも腰を振って難なくオリヴィエのペニスを根元まで受け入れた。
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