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一月は光と雪の月。
一月十日はルクウンジュを拓いた光神ユーウィスが霊峰バランスに坐されたことを祝うユーウィス教の大祭の日だ。
ユーウィスの礼拝堂では夜明け前から礼拝が行われ、十日の日の出を参列者全員の聖歌で迎える。
その後人々は自宅へ戻り、家族や親しい者達と食事会を行う。食事会の後には『ユーウィスの贈り物』を交わすのだ。
『ユーウィスの贈り物』は、今では前年に世話になった人に贈り物をする習慣になりつつある。だが本来は、今年初めてユーウィスの大祭を迎える子供に、その子が未来に渡って神々の恵みを受けられるよう、ユーウィスの白椿と、妻で闇の女神テネーヴの黒ダリアをあしらったお守りの置物を贈るという習わしだった。
※
前年、一八〇〇年七月末に五番目の子供が誕生したメールソー子爵家の今年の大祭のお祝いは、ラウールの叔父叔母達も集まる賑やかなものだった。
ラウールと親しくなってからは、お互いの屋敷に自分達の部屋を用意してもらい、大祭の日はメールソーかリオンヌのどちらかの祝いの席に二人で揃って出席をしているオリヴィエだが、今年は迷わずメールソーを選んだ。
ラウールとは十七歳半違いになる弟のテレーズは実に可愛らしかった。
いや、やたらとレースとフリルが満載の、ふわふわとした薄桃色の新生児服を着せられている姿は必要以上に可愛らし過ぎた。
「お母様も、あれじゃあテスが可哀想になるよ!」
ユーウィスの贈り物も終わり、一旦解散となった後。
二人一緒に戻ってきたラウールの部屋に入った途端、オリヴィエは笑い出してしまった。
ネクタイを緩めながらラウールも苦笑をする。
「誰もお母様には逆らえないから」
ラウールの母親のイレーヌは、昔から自分達の子供に男子しかいないことを嘆いていた。
テレーズを懐妊したことが判明した時から、「今回の子供は絶対に女の子」と彼女が断言していたのをオリヴィエも聞いている。
けれども彼女の希望とは裏腹に、生まれてきたのは玉のような男の子だった。
生まれた子の性別を知った彼女は茫然自失したという。
だがそれはほんの一瞬のことに過ぎなかった。
「この子は女の子!」
イレーヌは力強くそう宣言すると、周囲の意見を押し切って子供の名前を決め、そして赤ん坊が生まれる前から用意していた女児用のおくるみを生まれたばかりの子供に着せたのだった。
故に。
メールソー子爵家五男は「テレーズ」という女性名で、今日もまた女の子らしいふわっふわのとても愛らしく可愛らしい恰好をさせられていたのである。
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