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「おまえがせっかく参加すると決めた夏期学校だが、これについては学院へ欠席を連絡するよ」  それを聞き、思わずオリヴィエを振り返ってしまった。ラウールと目が合うとオリヴィエは苦笑を浮かべた。  ラウールも父の判断は妥当なものであると理解できる。  しかし言葉にならない欠落が胸の中に生まれていた。その欠落を埋められないまま、父親に顔を戻す。  ただその間も、ラウールの表情は少しも変化していなかった。  欠落の正体は解らない。それでももう、ラウールは現実を受け入れることに恐れはなかったのだ。  表情を動かさないまま、淡々と父親に返す。 「この状態です。仕方がありません。例年通りということですね」  昨年までもラウールは学院の夏期学校に参加してきていなかった。それはラウールの、他人と一緒になると寝ることができないという体質のためだった。だが今年は、オリヴィエとの同室を願うことで参加が可能になると考えられていたのだ。  しかし今の自分の状況では、たとえオリヴィエと一緒であっても到底参加が叶うものではない。  冷静に答えたラウールの顔をアントワーヌが凝視してきた。父のその視線にも静かに視線を返す。  ラウールの様子に小さく息を吐くと、アントワーヌは微笑みながら手を伸ばしてきた。頬に触れる父の掌はひんやりとして心地良かった。 「具合が悪いのに、遅くまで済まなかったね、ラル。明日に備えて今夜はゆっくり休んでおくれ」  そう言うと、アントワーヌはラウールに就寝の挨拶のキスをして部屋から出て行った。  アントワーヌが退出すると、一息つく様子でオリヴィエは寝台の傍の椅子に腰を下ろした。  彼には、こちらのことで昨日から多大なる気苦労をかけていると思う。しかしラウールは、それを苦にしていないというオリヴィエの言葉を汲みたいと思った。必要以上に、彼に対して後ろめたい気持ちを持たないようにする。 「明日はまた、少しごたついてしまうな」 「そうだね。君の熱が下がっているといいのだけど」 「うん。これについては、これ以上人に迷惑をかけるのは本意ではないので、今日は大人しく休むことにするよ。リーヴィ、君は入浴後ここに戻ってきてくれるだろう?」  夕食後、父へ今日のラウールの状況を報告していたオリヴィエは、この時間もまだ昼と同じ服装だった。
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