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「そのつもりではいるけれど。でも寝るのはソファにするよ。ジラルデ先生にも釘をさされているしね」 「それだけど。別に性交を行わなければ問題ないだろう? 今は僕も落ち着いているし、今夜は隣で一緒に寝て欲しい」  目を大きくしてラウールを凝視した後、オリヴィエは仕方なさそうに笑った。 「熱が出ているのに」 「発熱だけだ。そんなに気分が悪いわけじゃない。それにきっと、君が傍にいてくれるほうが良くなると思う」 「……甘えて欲しいと言ったのは僕だな」  オリヴィエは立ち上がると、ラウールが横になるのを手助けした。  横になってラウールもほっと息をつく。口では大丈夫だといったものの、身体を起こしているのはしんどかったのだ。  これであとは横にオリヴィエが来てくれれば、何も憂うことはない。 「じゃあ、少し待っていて。休めるようなら、先に休んでおいていてね」  結局、オリヴィエが戻ってくる前にラウールは眠りに入ってしまっていた。 『夢は見ない』  オリヴィエに言ったとおり、その日も夢は見なかった。  夜明け前。ラウールはまた飢えを感じ目を覚ました。  白檀の香りを強く感じる。  事態も三度目となると、落ち着いて状況を分析することができた。  現在の自分は生きるための活力を、食事ではなくオリヴィエによって得ているのではないか。今また、飢えを感じていることによって、昨日のその考察の信憑性が増したと思う。飢えを感じてはいるが、決して通常の食事をしたいわけではないのだ。  むしろ食欲はまったくない。  ただただ、この体内にオリヴィエが欲しい。彼によって満たされたかった。  ラウールの身体もオリヴィエを求める兆しをみせていた。彼の匂いを強く感じる。その匂いに反応して、秘部がぬるりと湿っているのを感じた。  記憶をなくす以前にはなかった、この秘部の状態もラウールは赤裸々にジラルデへ診察を依頼していた。  伸びた髪と同様に、これについてもジラルデの知識の範疇を越えていたらしい。確たる答えを得ることはできなかった。 「ただ、現在のラウール様の容態から考えますと……決して、お身体を損ねるものではないと思われます」  オリヴィエに視線を向けながら言われたこの言葉に、当のオリヴィエは俯いて赤面していた。  ジラルデの言葉や、オリヴィエの反応はどうであれ、彼をこの身に迎え入れるのに都合がよい。ラウールにとってはそれで十分だった。
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