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 その朝の朝食。ラウールはオリヴィエと一緒に時間通りに参加することができた。  昨日と同じく食欲はない。それでも自分の状況を把握し、気持ちが落ち着いていることは大きかった。食べられない食事を目の前にしても動揺することはない。  スープを三口。絞りたてのオレンジジュース(ル・ジユ・ドランジユ)をコップに一杯。昨日よりも口にできる分量は増えていた。この変化に何かの糸口があるのではないか。そんなことを思いつく。  朝食の後、イレーヌとジラルデから看護師を紹介された。 「コウダ・ジョルジーヌと申しますぅ」  おっとりと気取らない口調で挨拶をしてきたのは、小柄な女性だった。聞くところによると、ルクウンジュ東部ベーヌ州の出身だという。確かに彼女の顔立ちには、ベーヌに多いヤウデン系の特徴がよく出ていた。  その彼女は濃茶色の瞳を輝かせ、両手を組み、身を乗り出さん勢いで挨拶を続けた。 「まさか推し……いえ、ラウール様の専属を任されるとは、天にも舞い上がる思いでしてー。このジョルジーヌ、粉骨砕身でお仕えいたしますー」  やる気に満ちた表情や態度とは裏腹に、口調はあくまでおっとりかつ飄々としている。また、彼女の言葉の中には一部、ラウールには理解できない単語があった。それでも、彼女の熱意は十分に感じることができた。  両手で拳を握り、やる気満々のジョルジーヌの横ではジラルデが手で額を押さえていた。反対側の横ではイレーヌが面白そうに笑っている。 「彼女はこう見えて、とても優秀な看護師なのですよ。あなたとリーヴィのことも承知しているので、あなたたち二人にとって、きっと頼りになることでしょう」 「はいー。奥様のご期待にも、きっとお応えいたしますぅ。オリヴィエ様も、大船に乗った気分でいてくださいー」  その後午前中にもう一度、ラウールはオリヴィエを欲した。これが食事と同等であるだろうとは推測していたが、食欲とは異なり我慢することができない。それは少々困ったものだなと思った。 「でも、そのために療養を行うのだしね。焦らずにいこう」 事後に寝台の上で、裸体に掛布をかぶりながらぼやいたラウールに、衣服を整えながらオリヴィエはそう言った。 「そうですよぅ」  オリヴィエの言葉にジョルジーヌも同意する。  彼女は情報のやりとりのため直前までラウールたちと話をしていた。だがラウールが『発作』を起こすと部屋を退出したのだ。そしてことが終わるとすぐに戻ってきた。
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