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 ──独りよがりだったのかもしれない。……いや、一昨日の事案が、それほどの出来事だったということなのかもしれないが。  どちらにせよ、思慮に欠ける発言だったようだ。そう思った。  そう思うことで、期待した反応がないことに落胆する己の本音に蓋をした。こんな浅はかな気持ちは、存在しないことが一番正しい。  こちらを見つめたままのオリヴィエから視線を落とし、微笑する。 「すまない。……まずは自分の体調の回復だけを考えるべき時だったな。早く元の生活に戻られるようにしなければ、何も始まらない」 「ラル」  視線を落としたままオリヴィエから離れ、サンルームを出て行こうしたラウールの腕をオリヴィエが掴んだ。  振り返ったラウールにオリヴィエが笑いかけてくる。彼の意図が解らず、ラウールは首を傾げた。 「ありがとう」  オリヴィエは笑いながら礼を言ってきた。ますます彼の行動を理解することができない。ラウールは首を傾げるだけでなく、眉をひそめた。 「……礼を言われるようなことなど、僕はしていない」 「約束を覚えていてくれたことが嬉しいんだ」  そんなこと当然だろう。そう言おうとした。  だがオリヴィエの表情を見て、それはやめた。  彼は笑っていた。しかし同時に、今にも泣き出しそうだったのだ。  その複雑な顔に、考えまいとしている空白の一昨日を改めて重く感じた。そして自分の落胆など、やはり取るに足らないものだったのだと強く思う。  返す言葉が何も見つからない。 「素敵ですよねぇ」  お互いの間に生まれた重く凝ってしまいそうな空気。それを動かしたのは、清風のような一言だった。  気配もなく近づいてきていたジョルジーヌが、すぐ傍で両手を組み合わせ自分たちを見上げていた。  不意を突かれ驚いたラウールに、彼女はにこにこと笑いかけてきた。 「リーヴィ様が馬術をお得意とされているとー、私もお話を伺ったことがありますー。トリスタン様の牧場にはぁ、素晴らしい馬が多くいるとも伺っておりますー。そして本日は見事な快晴なり、であります〜。と、いうことでですねぇ」  ぐいと、彼女はラウールとオリヴィエの背を、サンルームの扉に向けて押した。 「お二人には早速お散歩に行ってきてもらいます〜」
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