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 血を混ぜ込んだ飴を作るという発想は、オリヴィエにとっても驚きだったようだ。ジョルジーヌから一通りの説明を受けると、オリヴィエはまた疑問点を口にした。 「斬新な発想だと思う。けれど、飴を作る工程で血液の成分が変質したりしない? それでラルに効果はあるのかな?」 「そこは試してみないとなんともなのですけれど〜。ただラル様にとっては、リーヴィ様の一部であったもの、ということこそが重要なのではないかと考えるのですよー。そーこーでー、この考えを元にしたわたくしめの正直な意見なのですけどぉ」  ジョルジーヌは指を組み合わせるとにこにこと笑った。 「療養に入られてからのラル様は、随分とお加減が安定してきています〜。それはこのジョルジュが太鼓判をどどーんと押せるものであります〜。ですのでー、事故の直後だったらとても無理でしたでしょうけどぉ、今のラル様だったらこの方法でしのげると思うのですー」  自分たちはまだ子供だ。たとえどんな思いを乗せても、その言葉の説得力には欠ける。  けれど知見に満ちた専門家でもあるジョルジーヌの言葉は違う。彼女の言葉にオリヴィエの心も揺らいだようだった。  あともう一押しだろうか。そう感じたラウールは、オリヴィエへとびきりの笑顔を作った。 「準備もあるだろうから今日は無理だろうけれど、明日にでもこの方法を試させてもらっていいだろうか? 君の心配事はなくしてしまいたい」  二人からたたみかけられ、オリヴィエは観念した模様だった。ふるふると頭を振ると、吐息と共に両手を上げた。 「解ったよ。是非ともその方法を試してみることにしよう」  オリヴィエの承諾を得て、ラウールは内心でひとまず安堵の息をついた。  明日。この試みがうまく行くことを願い、サブレを口にする。けれど。  美味な菓子であったはずなのに、オリヴィエの血を味わった後では物足りなさを感じてしまったのだった。
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