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「え、なん……で?」
その言葉の意味を理解するのに時間がかかり、気が付いたらカプセルの扉が自動的に閉まった後だった。
「え、今言ったのどういう事!」
手を掛ける窪みからドアを開けようとするがカプセルは開かず、なんとか透明の窓を手でずらして開けようとすると、その瞬間カプセルからビービーと音が鳴り始める。
「ちょっとやめな、警告だよ。音が大きくなっていくかもしれないから一回離れよう」
「でも、でも」
英治の言葉で胸がざわつき、このままではここから離れられない。
「いいから!」
ココに強引に手を掴まれ、恵麻は後ろ髪を引かれるような思いのまま仕方なく歩き始めた。
「どうしたのよ、あんなに取り乱すなんて」
近くの小さな喫茶店に入った。恐らく、今日付いた血であろう点々として赤の色がテーブルに見えてまた少し吐き気が蘇る。
「ちょっと、大丈夫?」
「あ、はい……その」
話し始めた。大学の仲がいいメンバーで集まっている時に英治が提案した美人局の計画、そしてそれを自分を含めた女子3人が断った事。
その中で争いが生まれ、英治を刃物で切った疑惑が自分に向けられ警察に連れられ、実際には関係なかったと英治が証言する代わりにこの配信番組に出るように説得された。
そして今、自分がここにいる。そのすべてを、ココに伝えた。
「……つまりその、あのカレがあなたをハメたはずだったけど、そこにそのお友達の女の子たちも絡んでいたって事かしら」
「そういえば、ある女子の友達の部屋でその争いが起きたんですけど、確かに不自然だったんです」
自分をハメたと思われる八千代という名前を、こうまでしても映像に乗らないように出さずに説明している自分の義理堅さが憎い。
「元々はアイツに下らない美人局計画を終わらせようっていう話でその子の部屋に行ったんですけど、急に彼女が逆にアイツを脅して金を出せとか言って……なんだか変な即興劇を見させられているみたいな急展開で……」
「……」
「それに、もうひとりいた子も私がアイツを刺したような……でもよく分からないみたいな曖昧な証言をしたんで私が警察に……」
「ってことは3人がグルだったって事かしら」
「なんで?なんでそんな」
「分からない。でも、他の参加者でもやたらと知り合い同士がいる気がして、何か運営側の目論見があるんじゃないかしら」
「目論見って……」
「例えばだけど、あなたたちの場合は友情の崩壊までをノンフィクションでドキュメンタリーにしようとしているとか」
「悪趣味すぎる」
「可能性のひとつよ。でも、きっと何かあると思うの。だけど今はそれを気にしすぎたら真実が分かる前にやられちゃうわ。いったん、ここ数時間に集中しましょう」
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