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「……本当!?見たかったぁ!アミは目がいいから羨ましい」
もう一人の少女はそう言うと、バッグから小ぶりなカメラを取り出してズーム機能を使ってアミと呼ばれた少女の指差した方にレンズを向ける。
「ホント。その一瞬の雰囲気と反比例する感じでゆっくり出る血っていうコントラストが超オシャレ」
「オシャレっていうか、カワイクない!?」
「んーそれはちょっと微妙かな。イケメンが二人で戦ってたらあれだけど、ヤンキーとオジサンだし」
少女たちの視線の先には、若い男が仰向けに倒れていた。男は坊主頭に近かったがその髪を金髪に染めていた。近くには肩で息をしながら鋭い視線を倒れた男に向けて立っている小柄な中年男性がいた。
倒れた男の周りには、点々とした血が芝生に付いていた。そして、金髪の髪の半分近くもまた、赤い血に染まっていた。遠くからでは勘違いアシンメトリーなヘアスタイルに見られてもおかしくないくらいはっきりと血が広がっていた。
それを見ながら彼女達は、さながら可愛い動物の仕草を見れたか見逃したかという雰囲気で話していたのだ。
最初は、肩がぶつかったとかの話だったと思う。金髪の男の方が、中年の男に因縁をつけた。
小突かれた中年男性がカッとなり拳を金髪の顔面に打ち付けた。
パンチが決まった瞬間、中年男の目は豹変した。目の前で自分より大柄な男が痛みに震える様子に興奮したのか、それともやり返される事を怖がった為か、中年男は続けざまに何度も殴った。
金髪男の謝罪の言葉が更に彼の加虐心を刺激し、更に殴った。
返り血か、それとも擦りむけた自分の血か分からなくなった拳の痛みを感じると彼は攻撃方法を膝蹴りに変えて、自身の体力が続く限り、眼前の男に攻撃を加えた。
そして、誰もそれを止めていない。
誰も、通報もしない。
「もっと痛めつけちゃえばいいのにね、遠慮しないで」
「指を1本ずつ折っちゃえばいいのに」
「うわあ、アミえげつないなぁ」
「えーひどいんですけど。みいだってさっきあの強面が爪剥がれたらどんな顔をするのかなぁ、とか言ってたじゃん!」
「そうだったっけ?」
みいと呼ばれた栗色の毛の少女が素っ頓狂な疑問形を口にした後、2人は顔を合わせてケラケラと笑った。
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