1章:6ヵ月前-企画立案-

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ジャンブルアップスの広報部の課長であった海田は、以前グループ会社全体のプレゼンで今回の企画を出して一蹴されたものの、お偉いさんの気まぐれで採用された為に営業部まで兼任する事になった。 「何でもまぜこぜにする」という意味を持つジャンブルアップと名付けられた会社の親にあたる会社は、歴史ある出版社である。 しかしながらそこは相次ぐ不況の波やニーズの変化によって壊滅寸前になり、事業を子会社ごとに分ける事によって生きながらえている。 ジャンブルアップスはそんな歴史を露ほどにも感じさせない過激なスタンスで、エンターテインメントの総合プロデュースを行っている。その名の通り、なんでもあり。媒体を選ばない仕事の幅と提携する企業を増やす自由度を売りにしている。 当初は結婚式でのサプライズ企画が主体だったが、過激な方面での悪名が広がった事で依頼は減り、今では本業としては結婚式と披露宴で計5回サプライズを起こす、それも花婿が式の前に不倫しているかのような誤解を生む映像を流したり、余興の際に参加者が花嫁を拳銃で撃つドッキリなど、非常識な内容に納得する悪趣味な依頼が年間数件あるかないかだ。 ただ、そのブラックな売り方が某国ジョークを愛するユーザーから支持されており、今では配信番組のプロデュース、企業のエイプリルフールの嘘広告のアドバイザー、そして海外の過激なリアリティ番組の原案を担当するなどして会社として成長を続けている。 非常識さを力に会社を引っ張る人間によって成り立つビジネスであり、海田自身も企画の推進力を評価されている事を自覚し、どんどん案件を取ってこれるように良くも悪くもアグレッシブなやり方を続けている。 当然、古くからのやり方を重んじる先人や、過激な企画を乱発してパワハラも辞さない、法律的にもグレーラインに立ち続けるやり方を嫌う人間は社内に多いが、実績こそ正義という考え方で突っ走ってきた。今更、落ち着く事など出来ない。
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